昨年の株価33%上昇、アジア主要市場で第2位に

2012/12/30

金融株57%上昇、時価総額26%増の11兆ペソ弱に
ペソ対ドルレートも堅調、年間で6.8%のペソ高 

 2012年のフィリピン株式市場、ペソ対米ドルレートともに強い動きとなり、各々アジア主要国のなかでトップクラスの上昇率となった。

株式市場については、好調なフィリピン経済、経常収支黒字維持等ファンダメンタルズの良好さにくわえ、10月央のミンダナオ和平枠組み合意署名という歴史的な出来事に代表されるような政治的安定度での前進、それらを背景にしたフィリピン格付や格付見通しの相次ぐ引き上げなどにより、株価上昇に拍車がかかったといえる。

 フィリピンの代表的な株価指数であるフィリピン証券取引所株価指数(PSEi)は、2009年63.0%上昇、2010年37.6%上昇、2011年4.1%上昇に続き、2012年も好調を維持、4年連続での上昇となった。

 2012年のPSE株価指数(PSEi)は1,440.77ポイント、率にして32.95%の上昇となり、アジアの流動性のある主要市場の中では、タイのSET指数の35.76%に次ぐ第2位のパフォーマンスを見せた。ちなみにSET指数は、2011年に大洪水の影響により下落しており、2012年の急上昇はその反動という要素もある。一方、PSEiは4年連続の上昇である。

 PSEiは、12月26日に終値ベースでの史上最高値終値ベースでの史上最高値5,832.83ポイントを記録した。2012年における最高値更新は38回に達しており、6.6営業日に1回の割合で最高値を更新したことになる。

 2012年のフィリピンのセクター別株価指数パフォーマンスに関しては、1位が金融の57.49%上昇。以下、不動産の55.59%上昇持株会社の47.01%上昇、工業(製造業、電力・エネルギー、建設など)の25.48%上昇、サービスの6.70%上昇と続く。唯一、鉱業・石油セクターが17.43%下落と低調であった。

 1日当たり平均売買代金は72億6,128万ペソで、2011年の平均57億1,323万ペソを約27%上回った。外人の売買高シェアは45%で、2011年の37.8%から上昇している。一方、外人の買越額は約1,100億ペソに達し、2011年の年間買越額約565億ペソの約2倍となった

 フィリピン証券取引所(PSE)の時価総額は、2012年4月央に初の10兆ペソ台に到達、その後も順調に拡大している。2012年末の時価総額は、2011年末比25.7%増の10兆9,301億ペソに達し、11兆ペソ台に急接近した。そのうち、国内企業の時価総額は同30.1%増の9兆4,163億ペソ、海外企業(カナダのサンライフとマニュライフが並行上場)の時価総額が同3.8%増の1兆,5,138億ペソである。

 一方、PDS(フィリピン・ディーリング・システム)でのペソ対米ドルレートは、2012年最終日終値が1米ドル=41.050ぺソとなり、2011年末の43.840ぺソから2.79ペソ、率にして6.8%上昇した。中央銀行データによると、アジア主要通貨の中では、韓国ウォンの7.8%に次ぐ2番目の上昇率となった。
 

 株式市場と同様、フィリピン経済の好調さ、ファンダメンタルズの良好さ、政治的安定度の改善、格付け機関による相次ぐフィリピンの格付や格付見通し引き上げなどにより、ペソは年初から堅調に推移した。年後半は、欧州債務や米国財政の崖に関する懸念の緩和、中国景気悪化懸念の緩和などを背景にした新興国への資金再流入の動きの中で、一段高となった。ただし、中央銀行のドル買い介入の動きがペソ上昇ピッチをやや鈍化させている(PDSやPSEの取引記録などより)。

              フィリピン証券取引所指数、ペソ対米ドルレートの動き(年末値)

フィリピン証券取引所株価指数 ペソ対米ドルレート
  時期 年末・月末値 上昇率 年末・月末値 上昇率
2004年 1,822.83ポイント 26.4% 56.280ペソ -1.4%
2005年 2,096.04ポイント 15.0% 53.090ペソ 6.0%
2006年 2,982.54ポイント 42.3% 49.030ペソ 8.2%
2007年 3,621.60ポイント 21.4% 41.280ペソ 18.7%
2008年 1,872.85ポイント -48.3% 47.520ペソ -13.1%
2009年 3,052.68ポイント 63.0% 46.200ペソ 2.9%
2010年 4,201.14ポイント 37.6% 43.840ペソ 5.4%
2011年 4,371.96ポイント 4.1% 43.840ペソ 0.0%
2012年 5,812.73ポイント 33.0% 41.050ペソ 6.8%

(出所:フィリピン証券取引所とPDSの取引記録などより作成)

 
      2012年のセクター別株価指数上昇率など(12月末時点)

項目 12月28日終値 PER(株価収益率) 年初からの上昇率 2011年の上昇率
フィリピン証券取引所指数 5,812.73 17.97倍 32.95% 4.07%
全株指数 3,698.98 19.09倍 21.48% 1.28%
金融セクター指数 1,525.95 16.01倍 57.49% 0.77%
工業セクター指数 8,877.29 14.61倍 25.48% -2.02%
持株会社セクター指数 5,150.76 15.97倍 47.01% 3.39%
不動産セクター指数 2,304.63 23.59倍 55.59% -6.40%
サービスセクター指数 1,724.65 23.91倍 6.70% 1.63%
鉱業・石油セクター指数 19,408.38 13.44倍 -17.43% 68.52%

(出所:フィリピン証券取引所資料より作成、株価収益率はPSE基準算出数値)

 
 フィリピン証券取引所の指数、規模、売買額等の推移

項目 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 12年の伸び率
フィリピン証券取引所指数 1,872.85 3,052.68 4,201.14 4,371.96 5,812.73 33.0%
年末時価総額(億ペソ) 40,692 60,291 88,611 86,970 109,301 25.7%
  国内企業時価総額 24,741 39,919 68,922 72,390 94,163 30.1%
  外国企業時価総額 15,952 20,372 19,689 14,580 15,138 3.8%
1日平均売買(億ペソ) 31.1 41.1 49.5 57.1 72.6 27.1%
外人の売買代金シェア 48.7% 32.4% 38.1% 37.8% 45.0% -
外人買越額(億ペソ) -221.6 149.2 356.2 565.2 1,099.8 94.6%
PER(株価収益率) 8.95倍 23.26倍 21.32倍 16.57倍 17.97倍 -

 (出所:フィリピン証券取引所資料より作成)