株価11カ月で29%上昇、世界最高水準のリターン
2012/12/01
金融株54%上昇、時価総額24%増の10.8兆ペソに
ペソ対ドルレートも堅調、年初から7.2%のペソ高
11月もフィリピンの株式市場とペソ対米ドルレートが強い動きを続けた。
フィリピンの代表的な株価指数であるフィリピン証券取引所株価指数(PSEi)は、2009年63.0上昇%、2010年37.6%上昇、2011年4.1%上昇と3年連続の続伸となっている。 そして、2012年も大幅上昇する見込みである。
11月のPSE株価指数(PSEi)は上昇ピッチが加速した。11月最終営業日(29日)の終値は5,640.45ポイントで、10月末から215.94ポイント、率にして3.98%の上昇となった。特に、第3四半期GDP成長率が7.1%でASEAN最高の伸びとなったとの発表などにより、月末にかけて、、終値ベースで5日間連続での史上最高値更新という強さを見せた。
好調なフィリピン経済やファンダメンタルズの改善にくわえ、10月央のミンダナオ和平枠組み合意署名という歴史的な出来事に代表されるような政治的安定度での前進、それらを背景にしたムーディーズのフィリピン格付引き上げなどにより、フィリピンに対する評価が一段と高まったといえる。
セクター別では、アヤラ系の優良銀行BPIによるフィリピン・ナショナル・バンク(PNB)買収の動きが表面化したことで、銀行再編成の動きが強まるなどとの観測により、金融セクターが大幅上昇、相場上昇の主導役となった。
年初11カ月間累計では、PSEiは1,268.49ポイント、率にして29.01%の上昇となり、アジア主要市場のなかでトップクラスのパフォーマンスとなっている。
11カ月間のフィリピンのセクター別株価指数パフォーマンスに関しては、1位が金融の53.61%上昇。以下、不動産の45.38%上昇、持株会社の41.46%上昇、工業(製造業、電力・エネルギー、建設など)の24.43%上昇、サービスの7.32%上昇と続く。唯一、鉱業・石油セクターが23.24%下落と低調である。
11カ月間の1日当たり平均売買代金は76億3,676万ペソで、2011年の平均57億1,323万ペソを約34%上回るペース。外人の売買高シェアは44%で、2011年の37.8%から上昇している。一方、外人の買越額は既に約943億ペソに達し、2011年の年間買越額約565億ペソ、2010年の同356億ペソを大幅に上回っている。
フィリピン証券取引所(PSE)の時価総額は、今年4月央に初の10兆ペソ台に到達、その後も順調に拡大している。11月末の時価総額は、2011年末比24%増加、10兆7,840億ペソに達し、11兆ペソ台が視野に入ってきた。そのうち、国内企業の時価総額は同28.6%増の9兆3,068億ペソ、海外企業(カナダのサンライフとマニュライフが並行上場)の時価総額が同1.3%増の1兆,4,772億ペソである。
なお、アジア諸国・地域の株式市場のパフォーマンスを示す有力指標である、ラッセル・アジア太平洋インデックスの2012年年初から11月末までの円建て総合収益率(リターン)は20.0%となっている。そのなかで、フィリピン株式市場のリターンは51.7%で首位、2位のタイ44.7%、3位のニュージーランド40.8%、4位のシンガポール38.0%、5位の香港34.8%などを大幅に上回っている。
また、フィリピンのリターンは、北米の26.9%、欧州の25.1%、欧州新興国の22.7%、ラテンアメリカ12.4%も大幅に上回っている。11カ月間のリターンは、主要国のなかで最高水準である。
一方、PDS(フィリピン・ディーリング・システム)でのペソ対米ドルレートに関しては、11月29日終値が1米ドル=40.900ぺソとなり、10月末の終値41.180ぺソから0.280ペソ上昇、11月月間で0.7%のペソ高となった。そして、2008年3月7日の40.850ペソ以来、約56カ月ぶりの40ペソ台到達となった。11カ月間累計では7.2%のペソ高となっている。
株式市場と同様、フィリピン経済の好調さやファンダメンタルズや政治的安定度の改善、格付け機関による相次ぐフィリピンの格付や格付見通し引き上げなどにより、ペソは年初から堅調に推移している。また、最近は、欧州債務や米国財政の崖に関する懸念緩和、中国景気悪化懸念の緩和などを背景にした新興国への資金再流入の動きの中で、ペソは一段高となっている。ただし、中央銀行のドル買い介入の動きがペソ上昇ピッチをやや鈍化させている(PDSやPSEの取引記録などより)。
フィリピン証券取引所指数、ペソ対米ドルレートの動き(年末、もしくは月末値)
フィリピン証券取引所株価指数 | ペソ対米ドルレート | |||
時期 | 年末・月末値 | 上昇率 | 年末・月末値 | 上昇率 |
2003年 | 1,442.37ポイント | 41.6% | 55.500ペソ | -4.3% |
2004年 | 1,822.83ポイント | 26.4% | 56.280ペソ | -1.4% |
2005年 | 2,096.04ポイント | 15.0% | 53.090ペソ | 6.0% |
2006年 | 2,982.54ポイント | 42.3% | 49.030ペソ | 8.2% |
2007年 | 3,621.60ポイント | 21.4% | 41.280ペソ | 18.7% |
2008年 | 1,872.85ポイント | -48.3% | 47.520ペソ | -13.1% |
2009年 | 3,052.68ポイント | 63.0% | 46.200ペソ | 2.9% |
2010年 | 4,201.14ポイント | 37.6% | 43.840ペソ | 5.4% |
2011年 | 4,371.96ポイント | 4.1% | 43.840ペソ | 0.0% |
2012年1月 | 4,682.44ポイント | 7.1% | 42.870ペソ | 2.3% |
2月 | 4,897.65ポイント | 4.6% | 42.750ペソ | 0.3% |
3月 | 5,107.73ポイント | 4.3% | 42.920ペソ | -0.4% |
4月 | 5,202.70ポイント | 1.9% | 42.205ペソ | 1.7% |
5月 | 5,091.23ポイント | -2.1% | 43.500ペソ | -3.0% |
6月 | 5,246.41ポイント | 3.0% | 42.120ペソ | 3.3% |
7月 | 5,307.66ポイント | 1.2% | 41.720ペソ | 1.0% |
8月 | 5,196.19ポイント | -2.1% | 42.060ペソ | -0.9% |
9月 | 5,346.10ポイント | 2.9% | 41.700ペソ | 0.9% |
10月 | 5,424.51ポイント | 1.5% | 41.180ペソ | 1.3% |
11月 | 5,640.45ポイント | 4.0% | 40.900ペソ | 0.7% |
12年1~11月 | 5,640.45ポイント | 29.0% | 40.900ペソ | 7.2% |
2012年のセクター別株価指数上昇率など(11月末時点)
項目 | 11月29日終値 | PER(株価収益率) | 年初からの上昇率 | 昨年の上昇率 |
フィリピン証券取引所指数 | 5,640.45 | 18.09倍 | 29.01% | 4.07% |
全株指数 | 3,639.42 | 24.00倍 | 19.52% | 1.28% |
金融セクター指数 | 1,488.30 | 15.99倍 | 53.61% | 0.77% |
工業セクター指数 | 8,803.31 | 15.32倍 | 24.43% | -2.02% |
持株会社セクター指数 | 4,956.22 | 15.67倍 | 41.46% | 3.39% |
不動産セクター指数 | 2,153.37 | 28.46倍 | 45.38% | -6.40% |
サービスセクター指数 | 1,734.58 | 23.57倍 | 7.32% | 1.63% |
鉱業・石油セクター指数 | 18,043.13 | 11.77倍 | -23.24% | 68.52% |
フィリピン証券取引所の指数、規模、売買額等の推移
項目 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年11月末 |
年末時価総額(億ペソ) | 40,692 | 60,291 | 88,611 | 86,970 | 107,840 |
国内企業時価総額 | 24,741 | 39,919 | 68,922 | 72,390 | 93,068 |
外国企業時価総額 | 15,952 | 20,372 | 19,689 | 14,580 | 14,772 |
1日平均売買(億ペソ) | 31.1 | 41.1 | 49.5 | 57.1 | 71.6 |
外人の売買代金シェア | 48.7% | 32.4% | 38.1% | 37.8% | 44.0% |
外人買越額(億ペソ) | -221.6 | 149.2 | 356.2 | 565.2 | 942.7 |
PER(株価収益率) | 8.95倍 | 23.26倍 | 21.32倍 | 16.57倍 | 18.09倍 |