アヤラ会長、三菱商事を高く評価

2012/09/25

 フィリピンは最有望地域とも強調

 三菱商事は、取締役会の機能強化を目的としての2001年に国際諮問委員会を設置、以降、毎年1回開催している。

 

 構成員は、ガバナンス体制整備の観点から、グローバルなビジネスを展開する当社の経営や企業戦略に対して、国際的な視点に立った提言・助言を行っている。それぞれの地域の政治・経済情勢についても報告し、意見を交わしている。

 先頃公表された三菱商事の2012年アニュアルレポートにおいて、「第11回を迎えた2011年11月の国際諮問委員会では、世界情勢における二つのパワーシフトとして、{西から東(先進国から新興国)}と{IT革命を原動力とする“国家から国家以外の集団への権力の拡散”}に注目すべきとの意見が聞かれた他、それぞれの地域におけるビジネス環境や大震災以降のエネルギー・ポートフォリオの在り方などについて活発な議論が行われた」と記載されている。

 そして、国際諮問委員からの手紙として、委員の一人であるフィリピンのアヤラコープのハイメ・アウグスト・ゾベル・デ・アヤラⅡ会長兼CEOによるステークホルダー宛てのコメントが次のように掲載されている(以下。アニュアルレポート原文のまま)。

 『ステークホルダーの皆様 2012年6月

 私は、国際諮問委員会のメンバーとなって以来、三菱商事グループが世界各地で展開する事業に触れ、その素晴らしさを実感してきました。もちろん以前から三菱商事グループが素晴らしい企業集団であることは理解していましたが、委員会に参加してその思いを一層強くしました。

 国際諮問委員会は、三菱商事が長期的な計画を策定・実行する上で、将来の方向性を検証するためのとても貴重な場です。委員会には、それぞれの業界や地域における一流のメンバーがそろっており、さまざまなビジネス・チャンスや国際的なマクロ経済政策、潜在的リスクを抱える地域や新興経済圏の動向などについて、意見を交わすことができるからです。一方、委員会のメンバーにとっても、三菱商事グループの豊かな事業経験から得るものがあり、いつもオープンな雰囲気の中、率直な対話を行っています。

 2011年11月に開催された直近の会合は、東日本大震災後の日本の状況の分析からスタートし、続いて小島会長から、先行きが不透明な国際情勢について基調講演がありました。会長は、先進国の回復は本調子とはいえないものの、新興国の成長が世界的不況を打開することに期待していると話されました。また、経営陣から、日本が直面している課題について、最新の報告がありました。

 次に、委員会メンバーのプレゼンテーションが行われ、多岐にわたるテーマについて議論しました。その一つが、21世紀を迎えて以降、ますます加速する西から東へのパワー・シフトです。アメリカに関しては、同国の経済が直面する課題や、大統領選挙をめぐるアメリカ政治の現実にも話題を広げ、欧州連合の財政難については、先進国のリスクに対応するための地域的枠組構築の重要性について話し合いました。さらに新興市場の将来性を分析し、中国ならびにインド、中南米の将来性について、幅広い議論を行いました。そして最後に、活発な貿易、財政、金融の動きを受けて活性化している東南アジア、ASEAN地域に対する私の見解を、皆さんと共有させていただきました。

 私は、アジアは三菱商事グループの成長にとって、今後も重要な地域だと考えています。なぜなら、グローバル経済の成長に地域的なばらつきがみられる中、アジアは好調な成長を続けているからです。欧米の財務・経済危機の影響を全く受けないわけではありませんが、アジアにはグローバル経済の逆風に屈しないだけの活力があり、たとえ欧州地域の経済縮小がさらに深刻化したとしても、財政面および政策面において、そのリスクを吸収する余裕があります。

 アジア諸国の多くは、旺盛な消費意欲を背景に好景気を維持しており、とりわけフィリピンとインドネシアは、国民の所得水準の向上により国内消費が伸長し、急激な経済成長を遂げています。そのおかげで、従来の輸出相手国が深刻な不況に陥っている局面においても、アジア地域内の貿易機会は増加しています。

 観光もまた、アジアの有望産業です。アジア諸国でビザ制限が緩和され、格安航空会社の運航便数が急増したことから、観光産業はさらなる成長が見込めるでしょう。渡航目的別では、主に、レジャーやエンターテインメント、リゾート、ショッピング、ビジネス、医療、そして教育を軸とした成長が期待されます。

 投資先としても、人件費などのコスト面で有利なアジアは有望で、サービス事業の受入先として、また、製造コスト軽減のための新たな製造拠点として注目されています。具体的には、フィリピンやインドネシアでは業務処理のアウトソーシング分野が成長を続けている他、ベトナムやフィリピン、インドネシアは低コストの生産拠点として人気が高まっています。アジア、特にASEAN諸国が域内の労働力の移動を可能にし、統合を推し進めるにつれて、労働力などコスト面の強みはさらに増すと予想されます。

しかし、アジアが成長を続けるには、インフラ基盤の近代化が必要で、インフラ整備が加速するにつれて大型の投資機会も発生するはずです。

最後に挙げるのは、ASEAN諸国の団結力です。貿易においても財政においても結び付きが強い、アジアおよびASEAN諸国の団結は、間違いなくASEAN域内のみならず、域外の経済大国との二国間あるいは多国間貿易の機会をさらに増加させ、確実に競争力を高めることでしょう。

 今後もグローバル経済のポジティブ、ネガティブの両面が、アジアの経済環境を決定する要因となります。三菱商事のグローバル展開は、実に広域にわたりますから、引き続き、経済環境が不透明な地域においては、リスク要因をできるだけ減らし、有望な地域において、投資と事業活動を増加させていくことが必要だと思われます。

 三菱商事の最大の強みは、多くのステークホルダーと適切な関係を築くことにより得た信頼関係です。私が会長CEOを務めるアヤラコーポレーションは、39年以上にわたり、三菱商事と実りある関係を築いてきました。その過程で、三菱商事が信頼の構築と維持に重点を置く様子を間近に見てきました。経済環境が不安定さを増す中、今後、三菱商事の持続可能な企業価値の追求に当たって、この強い信頼関係こそが成功の鍵となるでしょう。

現経営陣の小島会長ならびに小林社長、そして今までの経営陣の下、三菱商事の活動に長い期間参加できたことを光栄に思います。今後も、私個人ならびにアヤラコーポレーションは、信頼に応え、パートナーとして三菱商事のさらなる成功に貢献していく所存です』(三菱商事株式会社2012年アニュアルレポートオンライン版より)。