再生可能エネルギ―の固定買取価格決定

2012/07/28

 

水力5.90ペソ、風力8.53ペソ、太陽光9.68ペソ
3年後に見直し、海洋発電価格は決定先送り

 エネルギー規制委員会(ERC)は7月27日に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)における第一次固定買取価格を認可した。

  今回認可された固定買取価格は、水力発電による電力が1キロワット(kWh)5.90ペソ、バイオマス発電同6.63ペソ、風力発電同8.53ペソ、太陽光発電同9.68ペソである。これらの認可価格は3年後に見直しが行われる。
 なお、海洋温度差発電(OTEC)に関してはさらに検討が必要として、今回の認可は見送り、追って決定されることとなった。

 ERCは2010年7月23日、再生可能エネルギーによる発電事業者を対象とした固定価格買取制度(FIT)の骨格を公表した。それによると、ERCは再生可能エネルギー法に基づき、該当する事業者による電力のFITを保証するとしている。価格は再生可能エネルギー法に基づき設立された国家再生可能エネルギー審議会(NREB)が提示し、ERCが承認するとされている。

 NREBの固定買取価格提示は当初予定よりも大幅に遅れ、今年3月16日に提出された。その後の公聴会などを経て、ようやくERCの認可に至ったのである。REC認可額は下表のように、NREB提示価格を下回る水準となった。

再生可能エネルギー固定買取価格(1キロワットアワー当たり)

種類 NREB提示価格 ERC認可価格
水力 6.15ペソ 5.90ペソ
バイオマス 7.00ペソ 6.63ペソ
風力 10.37ペソ 8.53ペソ
太陽光 17.95ペソ 9.68ペソ

 (出所:エネルギー規制委員会資料より作成)

遅れに遅れていた固定買取価格が、その水準はともかくとして、正式認可されたことは再生エネルギー事業にとって大きな前進であるといえよう。フィリピンでも既に多くの国内外企業が再生エネルギー事業に取り組んでいる。

 フィリピンの再生可能エネルギー開発政策の歴史は古い。地熱発電開発は、1972年の大統領令(PD1442)以来、税や会計上の優遇措置がとられ、現在の地熱発電の設備容量は米国に次ぐ世界第2位となっている。97年には丸紅が参画する100MW規模の地熱発電所がミンダナオ島キダバワン市で稼働を開始した。同市の歳入に占める同発電所の納税比率は50%を超え、雇用や教育にも貢献している。

 小型水力については、91年の小型水力発電開発法(共和国法第7156号)により外国人投資比率を40%未満に制限する一方で、各種の優遇策が講じられた。海洋、太陽光、風力エネルギーについては97年の大統領令(EO462)で優遇措置が設けられた。事業例としては、ミンダナオ島の民間電力会社カガヤン・エレクトリック・パワー&ライト(CEPALCO)による国内初の大型太陽光発電所建設が挙げられる。同社は530万ドルをかけ、2ヘクタールの土地に6,500枚の太陽光パネルによる発電所を建設、04年9月に1MWの発電施設として稼働させた。住友商事が受注し、パネルはシャープ製を使用、設計性能を10%上回る出力を得ているという。

 また、伊藤忠商事と日揮が地場資本との合弁で新事業会社グリーン・フューチャー・イノベーションズ 社を設立し、19MW規模のバイオマス発電事業を開始しつつある。サトウキビ搾りかす(バガス)を燃料とし、余剰電力は外販を予定している。この発電事業は、当地で最大規模となる年産5万4,000キロリットルのエタノールの製造・販売事業参入に伴うものである(12年7月27日のフィリピンエネルギー規制委員会発表などより)。