サンミゲル・ビール、上場廃止の可能性

2012/07/25

浮動株式比率基準(最低10%)未達成で
キリン保有比率48.39%、浮動株式比率0.6%

 キリン・ホールディングス(キリン)出資のサンミゲル・ブリュワリー(サンミゲル・ビール=SMB)が、上場廃止となる可能性が出てきた。

 これは、SMBがフィリピン証券取引所(PSE)の浮動株式比率基準(最低10%)未達成であることによる。PSEはこの基準を、昨年11月30日までに達成するよう指示した。2012年は猶予期間となるが、2012年以内に達成しないと上場廃止と罰金というペナルティーを課せられる。

 このSMB株式保有比率は、2012年3月末時点で、サンミゲル約51%、キリン・ホールディングス(キリン)約48.39%となっている。この大株主2社合計の保有比率は99.39%に達しており、浮動株式比率は僅か0.6%。この状況は、現時点でも変わっていないと見られる。

 このような状況下で、SMB大株主のキリンとサンミゲルは、SMBの浮動株式比率基準達成のための方策を討議してきた。第3者割当増資、大株主両社が保有株式を同数あるいが同率売り出し、あるいはサンミゲルのみが保有株式を売り出してキリンが筆頭株主になるなど様々な可能性が考えられてきた。

 しかし、7月25日付けフィリピン各紙電子版によると、両社間で保有比率縮小などで同意に至らず、サンミゲルのラモン・アン社長は、SMBのPSEからの上場廃止を視野に入れ始めたとのことである。そして、「キリンがSMB保有比率縮小に同意しないことで浮動株式比率基準が期限内に達成出来ず、PSEがSMBの上場廃止を命じるならば、それに応じざるを得ない」とコメントしたとのことである。

 その一方で、ラモン・アン社長は、現在論議中の優先株の取り扱いに関して、保有比率算出ベースに優先株を加えることをPSEに認めさせることなどで、SMB上場廃止回避を模索しているとのことでもある。

 なお、SMBは2008年にサンミゲルの国内ビール事業スピンオフで発足、PSEに上場した。一昨年にはサンミゲルの海外ビール事業も取得している。さらに、洋酒事業を取得して総合酒類企業となる可能性もある。

 キリンは、サンミゲル本体への出資というかたちでフィリピンに進出した。当時はサンミゲル自身が国内ビール事業を行っていた。しかし、その後、国内ビール事業部門をSMBとして分社化、SMBは2008年5月12日にフィリピン証券取引所(PSE)に上場された。したがって、キリンは2009年前半に、保有していたサンミゲル株式約19.91%を売却、そのかわりにSMB社株式約48.39%を取得したという経緯がある