経団連、フィリピン等への巡視船艇供与を提言
2012/07/20
新海洋基本計画への提言・安全保障項目で
日本経済団体連合会(経団連)は7月17日に、新たな海洋基本計画に向けた提言をとりまとめ、公表した。
日本政府は総合海洋政策本部において、今後5年間の海洋政策に関する新たな海洋基本計画の策定作業を進めている。これまで、経団連は「海洋立国への成長基盤の構築に向けた提言」(2010年4月20日)や、「海賊対策の強化に向けた提言」(2011年10月18日)を公表し、総合的な海洋政策の実施やソマリア沖・アデン湾の海賊対策の強化を訴えてきた。新たな海洋基本計画の策定に対して、基本方針や海洋産業の発展のための重要政策について産業界の意見反映を図るため、提言を取りまとめたのである。
経団連は(1) 排他的経済水域(EEZ)および大陸棚、離島の管理、(2) 海洋エネルギー・資源の開発、(3) 自然災害対策、(4) 環境問題への貢献、(5) 安全保障の確保、(6) 海事産業の強化、(7) 人材育成と海洋教育などの分野での幅広い提言を行っている。
現在、特に重要課題となっている安全保障の確保に関しては、以下のような提言が行われた。
1.領海警備の強化
不審船や工作船などに対する海上保安庁の対策を強化するため、大型の巡視船艇や航空機の整備を進め、装備の高性能化を図るべきである。海上保安庁法や領海等における外国船舶の航行に関する法律などの改正により海上保安庁の海上警察権を強化し、領海警備を強化すべきである。また、宇宙と海洋の連携を図り、衛星と船舶などによる排他的経済水域や大陸棚の監視を行うべきである。
2.海賊対策
2000年をピークとして、マラッカ・シンガポール海峡をはじめ東南アジア周辺海域における海賊事件数は減少したが、完全収束には至っていない。シンガポールやマレーシアなど沿岸国の海上保安機関職員などの人材育成や、アジア海賊対策地域協力協定への協力、わが国との共同訓練など海賊対策を引き続き行う必要がある。
また、昨年12月に政府が策定した「防衛装備品等の海外移転に関する基準」により、平和貢献や国際協力に伴う防衛装備品等の海外移転の案件については包括的な例外化措置が講じられることとなった。これに基づき、沿岸国のインドネシアやフィリピンに対して巡視船艇をODAによって供与すべきである。
また、現行の海洋基本計画では、マラッカ・シンガポール海峡における海賊対策に関する取組みについては記述がある。新たな海洋基本計画には、2008年から急増したソマリア沖・アデン湾における海賊対策についても盛り込むべきである(12年7月17日の日本経済団体連合会ニュースリリースなどより)。