NTTデータ、アジアの大学のIT技術・人材開発支援

2012/06/17

慶応大学と協働、フィリピンのサンカルロス大等も対象
 

 NTTデータ(東京都江東区)と慶應義塾大学SFC研究所(神奈川県藤沢市、以下:慶應SFC研究所)は、アジア地域の大学におけるIT分野の先進的なテーマやアジア各国のニーズに適するソリューション・技術に関する研究開発の推進と、高度な専門性を持つITエンジニアや新規事業創造を実現できる人材の育成に関して協働していくことで、6月15日に基本合意した。
 


 NTTデータと慶應SFC研究所は、この協働を通じて、アジア地域の大学におけるIT技術開発力の伸張とIT人材育成に貢献し、将来的なアジアの大学を起点としたイノベーションの発信とビジネスの展開を目指す。

 NTTデータと慶應SFC研究所は、慶應義塾大学が運営推進するアジア国際教育協力プロジェクトSchool on Internet Asia(SOI Asia)のネットワークインフラを活用し、アジア地域の大学におけるIT技術開発力の伸張と人材育成を目的とした、研究開発・教育活動を共同して推進する。推進チーム代表には、國領 二郎(慶應義塾大学総合政策学部教授・学部長)が就任する。具体的な取り組みは以下の通り。

{産学連携研究推進に向けた取り組み}
(1)ICTの新規利活用を目的とする研究開発の実施
<実施主体>
NTTデータ、慶應SFC研究所、バンドン工科大学(インドネシア・バンドン市)
<実施概要>
「M2M×農業」注2をテーマに、センサー制御の農業分野への応用についての研究開発を行う。
第一フェーズとして、年内に植物成育に必要な情報(温度、光量等)をセンサーから収集する技術に関する実証実験を行う。
(2)アジア市場における先進的なクラウドサービスに関する研究開発の実施
<実施主体>
NTTデータ、慶應SFC研究所、マレーシア科学大学(マレーシア・ペナン市)
<実施概要>
「OpenFlow」、「OpenStack」を活用したフルOSSクラウド基盤の構築に関する研究開発を行う。第一フェーズとして、年内にマレーシア科学大学のキャンパスネットワークを利用したOpenFlowネットワーク構築に関する実証実験を行う

{人材育成に向けた取り組み}
(1)新規事業人材育成支援
<実施主体>
NTTデータ、慶應SFC研究所
<実施概要>
SOI Asiaパートナー全大学より起業に関心を持つ優秀な学生を募り、講義と演習をセットにした「起業家育成プログラム」を実施する。
講義は、慶應義塾大学ほかSOI Asiaパートナー大学の教員が受け持ち、講義はSOI Asiaの衛星授業配信基盤を利用してSOI Asiaパートナー全大学に同時中継される。
また、SOI Asiaパートナー全大学が参画するビジネスプランコンテスト「Business Plan Contest at SOI Asia」と連携、起業家志向の高い人材とのマッチング機会を創出する。NTTデータは、これら人材に対して2ヵ月程度のインターンシップを提供する予定である。
<対象大学>
チュラロンコン大学(タイ・バンコク市)、ヤンゴンコンピュータ科学大学(ミャンマー・ヤンゴン市)、バンドン工科大学(インドネシア・バンドン市)、マレーシア科学大学(マレーシア・ペナン市)等、SOIアジアパートナー全大学
<実施期間>
第一回:2012年下期(予定)
(2)ITエンジニア人材育成支援
<実施主体>
NTTデータ、慶應SFC研究所
<実施概要>
SOI Asiaパートナー全大学よりITエンジニアリングに関心を持つ優秀な学生を募り、講義と演習をセットにした「ITエンジニア育成プログラム」を実施する。
講義は、慶應義塾大学ほかSOI Asiaパートナー大学の教員が受け持ち、講義はSOI Asiaの衛星授業配信基盤を利用してSOI Asiaパートナー全大学に同時中継される。NTTデータは、これら人材に対して2ヵ月程度のインターンシップを提供する予定である。
<対象大学>
ハノイ工科大学(ベトナム・ハノイ市)、ヤンゴンコンピュータ科学大学(ミャンマー・ヤンゴン市)等、SOIアジアパートナー全大学
<実施期間>
第一回:2012年下期(予定)

 なお、NTTデータでは、2012年度~2014年度の中期経営計画で掲げた、新規分野拡大・商品力強化にむけた「戦略的R&Dの強化」の一環として、トップレベルの大学と連携した、先端技術の研究開発による技術力のさらなる向上を目指している。また、グローバルビジネスの拡大・充実・強化も掲げており、地域カバレッジの拡大/既進出地域の事業拡大を目指す上でも、アジア各国のITエンジニアの育成とアジアのトップ大学が持つ人的リレーションの積極的な活用は、必要不可欠であると考えている。
 
 慶應義塾大学は、2001年より運営・推進するSOI Asiaを通じて、アジア14カ国、36大学・研究機関をパートナー(フィリピンでは政府科学・技術省付属高等理工研究所、サン・カルロス大学)として、衛星インターネットの活用により遠隔講義等の高等教育の相互協力とIT技術者の人材育成を行ってきた。そして、この活動の中で、各地の大学はアジアにおける先端大学の地位を獲得し、特にITやネットワークに関しては大きな技術研究力と人材育成力を持つに至っている。最近では、アジア各国大学における日本企業や慶應義塾大学との共同研究への期待、さらにはアジア各国の学生たちの強いアントレプレナーシップの醸成が進んでいる状況である。
 そこで、アジアの大学における技術開発の進展や、各国での大学発の技術やビジネスモデルの事業化を推進していくためには、技術開発と人材育成に関するパートナーが必要であるとの認識を持つに至っていた。
 
 このような背景から、NTTデータと慶應SFC研究所は、昨年より「アジア地域の大学初ベンチャー企業の創出、ICTに関する産学連携研究発展のための技術分野や事業分野における検討」をテーマに、研究責任者として國領教授が就任、協働開始の具体化に向けた検討を推進してきた。
 この協働により、アジアの大学における技術開発とそれを活用した実用化の伸張、並びにアジア各国大学の人材育成に貢献することを目指す(12年6月15日の株式会社NTTデータと慶應義塾大学SFC研究所のニュースリリースより)。