ムーディーズ、フィリピン格付見通しを引き上げ

2012/05/29

ポジティブへ、格付は投資適格から2段階下のまま

  有力格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)が5月29日に、フィリピンの格付アウトルック(見通し)を引き上げた。



 ムーディーズは、フィリピン格付見通しを、これまでの「ステーブル(安定的)」から「ポジティブ(強含み)」へと引き上げた。格付け見通しの「ステーブル」という意味は、当面は格付け変更の可能性が小さいということである。一方。「ポジティブ」は、近い将来の格付け引上げの可能性があるという意味である。

 今回、格付自体は「Ba2」に据え置かれたが、格付見通し引き上げにより、昨年6月の格付一段階引き上げに続く、再引き上げの可能性が強まったことになる。ムーディーズは、フィリピンの財政収支改善や政府負債の縮小傾向、負債支払い能力の向上などを評価、格付見通し引き上げを決定した。

 なお、ムーディーズは、昨年6月にフィリピンの格付を、それまでの「Ba3」から「Ba2」へと引き上げた。アキノ政権下での財政収支改善などを評価した。ただし、「Ba2]という格付けは、依然投資非適格の範疇であり、投資適格最低基準「Baa3」の2段階下の水準である。

 ム-ディーズの格付け定義では、最上位はAaa(信用力が最も高く、信用リスクが限定的であると判断される債務に対する格付け)。以下、Aa、A、Baa、Ba Ba、B、Caa、Ca、C(最も格付けが低く、通常、デフォルトに陥っており、元利の回収見込みも極めて薄い債務に対する格付け)と順位付けられる。Baという格付けは、投機的要素をもち、相当の信用リスクがあると判断される債務に対する格付である。
 さらに、ムーディーズはAaからCaaまでの格付けに、1、2、3という数字付加記号を加えている。1は文字格付けのカテゴリーで上位に位置することを示し、2は中位、3は下位にあることを示す。

 なお、ムーディーズとならぶ有力格付け機関であるスタンダード&プアーズ(S&P)は2010年11月12日に、フィリピン外貨建て長期債務の格付けを、それまでのダブルBマイナス(BB-)から、ダブルB(BB)へと一段階引き上げた。このダブルB(BB)という格付けは、ムーディーズのBa2と全く同様の投資非適格の範疇であり、投資適格最低基準トリプルBマイナス(BBB-)より2段階下の格付けである。
 そして、S&Pは昨年12月16日に、フィリピン格付見通しを、「ステーブル」から「ポジティブ」へと引き上げたが、格付け自体は、ダブルB(BB)に据え置いた。

 したがって、ムーディーズとS&Pの基準では、フィリピン格付が投資適格となるには、まだ時間がかかりそうである(12年5月29日のムーディーズ・インベスターズ・サービス発表より)。