住友鉱出資のニッケル・アジア、出荷量38%増加

2012/04/15

市況下落で出荷金額は16%減少:第1四半期
 

フィリピンの有力ニッケル鉱山会社であるニッケル・アジア・コーポレーション社(ナック社)の出荷量が好調に推移している。既報の通り、2011年のニッケル鉱石出荷量は前年比25%増の1,040万トンであった。



 2012年に入っても、ナック社のニッケル鉱石出荷量の大幅増加傾向が継続している。2012年第1四半期(1~3月)の出荷量は前年同期比38%増の180万トンに達した。180万トンのうち、約150万トンがリオツバ鉱山から、約30万トンがタガニート鉱山から出荷された。第2四半期からはタガナアン鉱山、ガグディアナオ鉱山からの出荷も開始される予定である。

 2012年第1四半期の出荷量は大幅増加したが、ニッケル国際市況下落により、出荷額は前年同期比16%減の16億6,000万ペソにとどまった。ちなみに、第1四半期のロンドン金属取引所(LME)でのニッケル1パウンド当たり平均価格は8.78米ドルで、前年同期比24%も下落した。ナック社の出荷量180万トンのうち約67%に相当する120万トンの出荷価格はLME市況に連動、LME市況下落が響いた。
 一方、中国向け中低位ニッケル鉱石の販売価格はLME市況に連動しておらず交渉ベースで決定される。この交渉ベース販売(約60万トン)での1トン当たり出荷価格は22.58米ドルで前年同期比21%上昇、LME市況下落の悪影響を緩和した。

 ナック社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社である。2006年2月に、それまで個別に経営されていたサモラグループ傘下のニッケル鉱山会社の資本を統合し、経営資源を集中させることにより、経営の一層の効率化を実現するために設立された。

 ナック社は、住友金属鉱山の重要な戦略パートナーである。ナック社傘下には、住友金属鉱山のフィリピン子会社であるコーラルベイ・ニッケル社(CBNC)へ出資するとともにニッケル鉱石を供給しているリオツバ・ニッケル・マイニング社がある。
 住友金属鉱山は2009年8月にナック社に資本参加した。2011年12月末時点で、100%子会社である住友金属鉱山フィリピン・ホールディングス(SMMPH)を通じて、ナック社株式約19.17%(個別株主名が明示されている分)を保有している。

 また、ナック社は昨年10月3日に武装勢力の襲撃を受けて、操業一時停止を余儀なくされたタガニート・マイニング・コーポレーション(TMC)の親会社である。襲撃事件を克服し事業拡大を続けているといえよう。

 なお、ナック社は、三菱商事(上海)有限公司との間で代理店契約を締結、2012年には約80万トンの鉱石供給を行うことになっている。今後、三菱商事(上海)有限公司の強力なネットワークがナック社の中国戦略に大きく寄与することが期待される。(12年4月13日のフィリピン証券取引所回覧2761-2012号などより)。