横浜タイヤ・フィリピン、一段の飛躍へ
2012/01/05
生産とCSR活動双方で高評価
ヨコハマタイヤ・フィリピン(YTPI)は生産規模の拡大や製品の高品質で注目される一方、フィリピンでトップレベルの環境・社会貢献企業として知られている。そして、全従業員参加型の継続的な貢献活動で高い評価を受けている
横浜ゴム株式会社(横浜ゴム)のフィリピン100%子会社であるヨコハマタイヤ・フィリピン(YTPI)は、1996年に輸出向け乗用車用タイヤの生産拠点として設立された。横浜ゴムがアジアで最初に設立したタイヤ生産販売会社であり、クラーク特別経済区に初期から進出している国際企業である。
YTPIは現在、内径13~18インチの乗用車用およびSUV用タイヤを生産し、その大半を欧州、北米、ASEAN諸国に市販用タイヤとして輸出しており、北米、アジア諸国の自動車メーカーにもOEM(相手先ブランド製造)を納入している。
また、YTPIは同区進出企業の中でその経済、社会貢献、環境保護活動などが高く評価され、クラーク開発公社(CDC)から2009年、2010年と2年連続で総合優秀賞を受賞している。
YTPIは、世界中の多くのユーザーから信頼される製品を製造するとともに、グループ内アジア地域でのモデル工場となることを目指している。現在は第4期拡張計画に着手しており、同計画は第1次と第2次の2段階方式で行われる。
まず、第1次拡張として、生産能力を現在の年間700万本から1,000万本に引き上げる。そのため、現在のタイヤ工場隣接地の借用契約を結び新タイヤ工場の建設をスタート(2011年5月23日にくわ入れ式実施)させ、2013年から第1次拡張の操業を開始し、2014年からフル生産に入る。第1次の投資額は200億円の予定である。
第2次拡張として2014年までに年間1,300万本に引き上げるための投資を実施し、2017年をめどに、同1,700万本体制(現行の2.4倍)まで生産能力の引き上げを計画している。総投資額は累計500億円の見込みである。YTPIが新たに生産するタイヤは、主に北米市場を中心に輸出する計画。YTPIのタイヤ工場敷地面積は現在の2.8倍に相当する46万平方メートルになる。
また、従業員数は現在の約2,200人から2017年には5,000人へ倍増、さらに、輸出額は2010年の2億6000万ドルから6億ドル超へと大幅増加する見込み。この増産計画が実現すると、YPTIのクラーク工場は、横浜ゴムグループにおいて、日本国内工場も含めた中での最大生産拠点となる。そして、フィリピン経済への貢献も一段と高まることになる。
YTPIは、このような生産体制拡充の一方で、横浜ゴムグループの「社会からゆるぎない信頼を得ている地球貢献企業になる」とのCSR(社会的責任)経営ビジョンに沿って、フィリピン国内でトップレベルの環境・社会貢献企業として、全従業員参加型の貢献活動を継続的に行っている。YTPIの名は環境保護や支援プロジェクトの代名詞のような存在と受け止められるようになってきた。
横浜ゴムグループでよく知られているCSR活動の一つとして「YOKOHAMA千年の杜」プロジェクトが挙げられる。これは、横浜ゴム創業100周年に当たる2017年に向け、およそ10年かけて国内外の全生産拠点に森を創生するプロジェクトで、2007年にスタートした。宮脇昭氏(植物生態学者/横浜国立大学名誉教授)の指導の下、潜在自然植生にのっとった植樹活動を進め、国内7生産拠点と海外グループ会社の11生産拠点で約50万本を植樹する。2010年末で国内外あわせて目標50万本の36.4%に当たる約18万2000本を植樹している。YTPIも同プロジェクトに積極参画、2008年12月の第1期植樹祭から2010年までの累計植樹本数は1万6311本に達している。その他、YTPIは以下のようなCSR活動を展開している。
1.環境経営の推進
常に計測できる指標を用いながら、環境マネジメントシステムを強化し、環境汚染の予防と環境改善を継続的に進め、最良かつコスト効果のある技術を開発すべく努力している。さらに「ゼロエミッション」を達成するため、分別徹底で資源の有効利用を行い、埋め立て処理の廃棄物を削減してきた。そして、2010年に廃棄物の埋め立て処分量をゼロにする完全ゼロエミッションを達成した。
下表の通り、大幅な生産量拡大にもかかわらず、2010年度(1~12月)の廃棄物発生量は、3年前の2007年度に比べほぼ半減の2,185トン、エネルギー使用量(原油換算)が同約4%減の2万5690キロリットル、温室効果ガス排出量が同ほぼ横ばいの6万3800トン、水使用量が同約5%減の45万3000平方メートルという成果を挙げている。
ヨコハマタイヤ・フィリピンの環境データ
項目 |
2007年度 |
2008年 |
2009年度 |
2010年度 |
廃棄物発生量(トン) |
4,282 |
2,288 |
1,701 |
2,185 |
埋め立て率(%) |
N.A. |
3.6 |
3.0 |
0.0 |
エネルギ―使用量(原油換算:千KL) |
26.7 |
26.3 |
23.7 |
25.7 |
温室効果ガス排出量(千トン-CO2 ) |
63.4 |
65.6 |
58.5 |
63.8 |
水使用量(千立米) |
476 |
511 |
404 |
453 |
(出所:ヨコハマタイヤ・フィリピンのCSRレポートより作成、年度は1月~12月)
2.安全健康な職場環境整備
・安全衛生はすべての基本として、労働災害防止と快適な職場づくりと健康づくりを目指し、日常安全点検を強化、リスクアセスメント活動や、OHSAS18001導入・運用により潜在的危険の排除に日々取り組んでいる。
・品質、安全、環境についてはそれぞれTS16949、OHSAS18001、ISO14001にのっとった教育・訓練を行い、その成果の確認を継続している。定期的な集合教育だけではなく、個別テーマごとに、実際の現場における改善活動を通したOJTも積極的に行っている。
・フィリピンは地震のリスクがある国であり、毎年行われる避難訓練を通して、避難ルートの安全性の確認と従業員組織による消防訓練を継続している。YTPIが立地するクラーク特別経済区を運営するクラーク開発公社主催の消防団対抗戦では、YTPIの消防団が総合優勝した。この対抗戦は、クラーク特別区内外の企業数社が参加し、今回は2008年以来、3度目の総合優勝となった
3.消費者とのコミュニケーション
・年1回Media night というイベントを催し、YTPIの活動をプレス関係者に情報を提供している。また地域社会との交流の機会として茶会を開催。またCSR活動の発信として、YTPI独自のCSRレポート・ウエブ版を発行、横浜ゴムのウェブサイトにて公開している。
4.人権・労働慣行
・フィリピンの労働法に沿って児童労働、残業時間、労働条件管理等の教育を実施している。
・専門の監査課(AUDIT SECTION)を設け、取引先監査の際の確認項目として、人権侵害の恐れのある企業と取引をすることのないよう、仕組み化して運用している。
・夜勤を含む就業条件の都合で、工場内は男性が多いため、女性の比率は6%と低い数字となっている。しかし、間接業務部門では環境の責任者であるAVP(副社長) をはじめ、多くの女性マネージャーが活躍している。
5.取引先との関係構築
監査課から年に1度、社長名で各取引先に手紙を出し、意見や苦情を聞く、コンプライアンスホットラインという仕組みがある。
6.ステークホルダー・コミュニケーション
・奨学金制度、恵まれない子どもたちへの支援基金、近隣の学校設備の修繕・維持、パソコン寄付や使用法研修、上記のような大規模かつ継続的な植林「千年の杜プロジェクト」など様々な活動を展開している。
・その多くについてYTPIの従業員自らが係わり、募金だけではなく実際の活動にも積極的に参加している。千年の杜プロジェクトでの植樹作業はもちろん、学校や病院に物資を贈る際にも、多くの従業員がボランティアとして参加し、贈呈した設備の取り付け作業を行ったり、子どもたちと交流したりしている。昨年、何らかの支援プログラムに参加した従業員の数はのべ800人、従業員の約半数が参加経験を持っている。
以上のように、YTPIは生産基盤拡充、雇用拡大を推進する一方、規模の拡大とともに増加する環境への影響を最小限に食い止めるべく、地球温暖化、天然資源の枯渇問題など、環境保護活動への取り組みを強化し、フィリピン国内でリーダー役となる企業の一つとて、今後もその責任を果たしていくよう活動を強化していく方針である(横浜ゴムとYTPIのCSRレポート、ニュースリリースなどより)。