昨年の株価4.1%続伸、世界2位のパフォーマンス
2011/12/31
ペソ終値は2010年と同水準の43.840ペソに
フィリピン格付け引上げなど背景に堅調な動き
2011年の金融取引き最終日は12月29日であり、その後3連休となった。
2011年は、欧州債務懸念、米国格付け引き下げ、中東・北アフリカでの混乱、世界景気鈍化などを背景に、世界の金融市場は不安定な動きとなった。そして、新興国市場からの資金引き揚げの動きが活発化した。
そのなかで、フィリピンの株価、ペソ対米ドルレートともに、比較的堅調に推移した。特に、株価は、世界の中での相対的パフォーマンスはトップクラスとなった。フィリピンのOFW(海外就労者)からの送金による経常収支黒字維持、堅調な内需、アキノ政権下での汚職減少期待、有力格付け機関による相次ぐフィリピン格付け引上げなどが、フィリピンの株価やペソを堅調に推移させたといえよう。
PSE株価指数(PSEi)の2011年最終日終値は4,371.96ポイントで、2010年末の終値4,201.14ポイントから170.82ポイント、率にして4.1%上昇、2009年の63%上昇、2010年の37.6%に続いての3年連続の続伸となった。8月1日には4,550.53ポイントという史上最高値(瞬間高値、終値ともに)史上最高値を記録した。
セクター別指数パフォーマンスでは、トップの鉱業・石油の68.5%上昇が群を抜いている。以下、持株会社の3.4%上昇、サービスの1.6%上昇、金融の0.8%上昇、産業(製造業、電力・エネルギー、建設など)の2%下落、不動産の6.4%下落と続く。
また、2011年末のPSE上場企業時価総額は8兆6,970億ペソで、2010年末の8兆8,661億ペソから1.9%減少した。国内企業の時価総額は前年末比5%増の7兆2,390億ペソへと増加したが、外資系企業(マニュライフとサンライフのカナダ系2社、カナダや米国市場等と並行上場)の時価総額(ペソ換算額)が、同26%減の1兆4,580億ペソへと減少したことが響いた。
2011年の売買代金は前年比17.8%増の1兆4,226億ペソ、1日当たり平均売買代金は57億1323万ペソであった。外人の売買シェアは38%で、2010年と同水準となった。一方、外人の買い越し額は565億ペソで、前年の356億ペソから59%増加した。
2011年の新規上場は、2月18日のメガワイド(建設企業)、が9月12日のフィレックス・ペトロリアム(IPOなしのイントロダクション方式)、10月5日のピュアゴールド(小売企業)、11月18日のサーテック(エレクトロニクス企業)、11月24日のカラパン・ベンチャーズ(水道企業)、12月19日のタッチ・ソリューションズ(IT企業)の6社であった。
なお、フィリピンのPSE株価指数の年間4.1%上昇は、世界の流動性のある株式市場の中では、米国NYダウ工業株30種平均の同5.5%上昇に続く第2位のパフォーマンスとなった。東南アジアのなかでは、インドネシアの同3.2%上昇を上回りトップのパフォーマンスとなっている。2010年のPSE株価指数も東南アジアで屈指のパフォーマンスを見せており、フィリピンに対する相対的評価が高まっているともいえよう。
PDS(フィリピン・ディーリング・システム)でのペソ対米ドルレートは、2011年最終日終値が1米ドル=43.840ぺソとなり、2010年末の終値と全く同水準となった。新興国資産敬遠の動きが強まるなかで、フィリピンは財政収支改善、経常収支黒字継続、相次ぐ格付け引上げなどを背景に、ペソが比較的堅調に推移した。
フィリピン証券取引所指数、ペソ対米ドルレートの動き(年末、もしくは月末値)
フィリピン証券取引所株価指数 | ペソ対米ドルレート | |||
時期 | 年末・月末値 | 上昇率 | 年末・月末値 | 上昇率 |
2000年 | 1,494.50ポイント | -30.3% | 49.998ペソ | -24.0% |
2001年 | 1,168.08ポイント | -21.8% | 51.404ペソ | -2.7% |
2002年 | 1,018.41ポイント | -12.8% | 53.096ペソ | -3.2% |
2003年 | 1,442.37ポイント | 41.6% | 55.500ペソ | -4.3% |
2004年 | 1,822.83ポイント | 26.4% | 56.280ペソ | -1.4% |
2005年 | 2,096.04ポイント | 15.0% | 53.090ペソ | 6.0% |
2006年 | 2,982.54ポイント | 42.3% | 49.030ペソ | 8.2% |
2007年 | 3,621.60ポイント | 21.4% | 41.280ペソ | 18.7% |
2008年 | 1,872.85ポイント | -48.3% | 47.520ペソ | -13.1% |
2009年 | 3,052.68ポイント | 63.0% | 46.200ペソ | 2.9% |
2010年 | 4,201.14ポイント | 37.6% | 43.840ペソ | 5.4% |
2011年 | 4,371.96ポイント | 4.1% | 43.840ペソ | 0.0% |
2011年1月 | 3,881.47ポイント | -7.6% | 44.270ペソ | -1.0% |
2月 | 3,766.73ポイント | -3.0% | 43.565ペソ | 1.6% |
3月 | 4,055.14ポイント | 7.7% | 43.390ペソ | 0.4% |
4月 | 4,319.51ポイント | 6.5% | 42.800ペソ | 1.4% |
5月 | 4,244.64ポイント | -1.7% | 43.250ぺソ | -1.0% |
6月 | 4,291.21ポイント | 1.1% | 43.330ペソ | -0.2% |
7月 | 4,503.63ポイント | 5.0% | 42.140ペソ | 2.8% |
8月 | 4,348.50ポイント | -3.4% | 42.280ペソ | -0.3% |
9月 | 3,999.65ポイント | -8.0% | 43.720ペソ | -3.3% |
10月 | 4,333.72ポイント | 8.4% | 42.620ペソ | 2.6% |
11月 | 4,211.04ポイント | -2.8% | 43.640ペソ | -2.4% |
12月 | 4,371.96ポイント | 3.8% | 43.840ペソ | -0.5% |
2011年累計 | 4.1% | 0.0% |
(出所:フィリピン証券取引所とPDSの取引記録などより作成)
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