比証券取引所からの自主的上場廃止の動き続く

2011/12/06

PLDTコミュニケーション&エナジーV社も廃止決議

スマートが99.5%保有、浮動株最低基準等を考慮

フィリピン長距離電話(PLDT)グループのPLDTコミュニケーション&エナジー・ベンチャーズ社(PCEV社)は12月2日の取締役会において、フィリピン証券取引所(PSE)からの自主的上場廃止を決議した。

 現在PCEV社は、PLDTの100%子会社で最大眼携帯通信企業であるスマート・コミュニケーションズ(スマート)によって99.51%所有されており、浮動株式比率は0.49%に過ぎない。

 現在、PSEは浮動株式比率最低基準(現在10%)遵守を強く要求しているだけでなく、最低基準の引上げも検討している。PCEV社はこの浮動株式比率最低基準や、PLDTグループ内の事業再編成の動きなどを考慮して、自主的上場廃止方針を決定したと見られる。

 PCEV社の旧社名はピルテルであり、中低所得層向けの低コストの携帯通信事業など展開してきたが、2009年に携帯通信事業をスマートに売却した。その後は、PLDTグループが傘下に収めたマニラ電力(メラルコ)の株式保管企業としての色彩を強めたが、現在はメラルコ株式に関しても間接保有となっている。

 なお、シンガポール系のケッぺル・フィリピン・マリーン(KPM)が、今年10月28日にPSEから自主的上場廃止となった。7月の自主的上場廃止決議時点で、KPM株式の95.83%はシンガポールのKSインベストメンツ(KSI)によって保有されており、浮動株式比率は4.17%に過ぎなかった。KPMは、PSEでの資金調達の予定もなく、浮動株式比率を引き上げる状況でもないことから、自主的上場廃止を選択した。

 また、台湾最大の商業銀行の「中國信託商業銀行」のフィリピン現地法人であるチャイナトラスト(フィリピン)商業銀行(CHTR)は、今年10月7日の特別取締役会において、フィリピン証券取引所(PSE)からの自主的上場廃止を決議した。
 CHTRのPSE上場廃止決議も、PSEの浮動株式比率最低基準運用厳格化が契機となった。CHTRの株式の約99.4%は、親会社の中國信託商業銀行に保有されており、浮動株式比率は約0.6%に過ぎない。CHTRは、浮動株式比率10%引き上げよりも、PSEからの上場廃止・非公開企業化という選択の方がメリットが大きいと判断した。

 外資系企業だけでなく、PSE上場のフィリピン国内企業のなかにも、浮動株式比率最低基準を満たしていない企業があり、今後の動向が注目される。
 
 一方、PSEへの新規上場企業数は今年は6社となる見込み。社数では最近では多い方であるが、大半が小型企業である。また、当初の計画では史上最大級のIPO(新規公募)・新規上場案件となるはずであったサンミゲル傘下の電力持株会社SMCグローバル・パワーホールディングス(SMCGPH)のIPO(新規公募)、PSE新規上場も延期されている。上場企業数も約250社に過ぎない。そのような中での、相次ぐ自主的上場廃止の動きは要注意といえよう(フィリピン証券取引所回覧8378-2011号などより