在フィリピン日系企業、FTA/EPA利用率38%

2011/10/21

日比経済連携協定利用率:輸出15%、輸入17%
事業拡大意向比率43%、アジアで最低水準

 日本貿易振興機構(ジェトロ)では2011年8月1日~9月15日に、北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施、10月20日にその結果を「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」として発表した。有効回答は3,904社(有効回答率47.8%)。フィリピン進出日系企業の有効回答は126社(有効回答比率54.8%)。調査結果のポイント・要旨、及びフィリピン進出日系企業動向は以下の通り。

 



(1)2011年の景況感は前年のV字回復から減速 、フィリピンの黒字予想比率67.4%

 2011年の営業利益を「黒字」と予想した比率は全体で67.8%、前年の69.4%から1.6ポイントと低下した。「赤字」と予想した比率は18.0%で前年の13.2%から上昇。大企業では71.5%が黒字と予想、中小企業の60.9%を約10ポイント上回った。
 フィリピン進出日系企業の営業利益黒字予想比率は63.5%(前年67.4%)、赤字予想が14.3%(前年10.2%)、収支均衡予想が22.2%(前年22.5%)であった。

 2011年の営業利益前年比改善予想比率は41.6%にとどまった(前年は58.8%)。2012年が2011年に比べ改善と予想する比率は53.1%であった。
 フィリピン進出日系企業の営業利益の前年比改善予想比率は2011年40.8%、2011年が43.3%と全体よりも低水準。特に、2012年は台湾、香港・マカオ、シンガポールに次ぐワースト4位である。

(2)事業拡大意向企業63.6%、フィリピンでは43%と低水準
 今後1~2年の事業展開の方向性について、拡大を志向する企業比率は63.6%で、前年調査の62.0%から1.6ポイント上昇した。一方、「縮小」との回答が2.4%、「第3国(地域)へ移転・撤退}と回答した企業の割合は0.8%であった。
 フィリピン進出日系企業に関しては、拡大意向比率が43.0%で、ニュージーランドの42.2%に次ぐ低水準であった。現状維持比率が49.6%、縮小比率が5.0%、第3国(地域)へ移転・撤退比率が2.5%であった。

(3)東日本大震災の影響は約7割の企業に波及も、6か月未満で収束へ
 
東日本大震災の影響はASEANや北東アジア中心に、約7割の企業の調達活動や販売動向に波及。しかし、主要な事業活動への影響は、5割超の企業で3カ月未満、約9割の企業で6カ月未満のうちに収束。サプライチェーンの早期復旧に伴い、3分の2の企業は事業戦略・方針を「見直さない」と回答。「大幅に見直した」との回答は2.4%にとどまった。
 フィリピン進出日系企業に関しては、「深刻な影響があった」が13.7%、「軽微な影響があった」が54.8%、「なかった」が31.5%という回答割合であった。

(4)人件費と調達コスト上昇への対応が最大値経営課題、フィリピンでは為替変動、現地調達の困難さなど
 経営上の2大問題である賃金上昇と調達コストの上昇がさらに深刻化。ベトナム、インド、中国などの賃金ベースアップ率は2011年、12年ともに2桁見込み。進出企業は当面、管理費・間接費の削減や原材料調達先・内容の見直しなどで対応。

 賃金上昇は多くの国・地域で経営上の最大の問題点(回答率68.8%)になっている。また、調達コストの上昇(同57.5%)、競合相手の台頭(同52.0%)などの回答比率も高かった。
 フィリピン進出日系企業で回答率が高かったのは、現地通貨の対ドルレート変動(55.4%)、原材料・部品の現地調達の難しさ(54.7%)、現地人材の能力・意識(50.9%)、賃金上昇(48.4%)、調達コスト上昇(46.7%)など。
 
(5)FTA活用が進展
 進出企業のFTA/EPA活用率は輸出・輸入の双方で着実に増加。進出国と日本との間のFTAも進展し、繊維や輸送機械器具などの業種を中心に活用が拡大している。

 貿易を行っている企業のうちFTA/EPAを活用との回答比率は、全体では40.3%であった。特にASEAN進出企業に多い。ASEAN国別では、インドネシア(64.4%)、タイ(49.3%)、ベトナム(44.3%)、マレーシア(42.9%)、シンガポール(40.6%)、フィリピン(37.6%)という順位なっている。
 フィリピン進出日系企業のFTA/EPA利用は、輸出に関しては、対ASEANが21社(利用率56.8%)、対日本が10社(同15.4%)、対中国が7社(同26.9%)。輸入に関しては、対ASEANが17社(同34%)、対日本が13社(同17.3%)、対中国が8社(同25.8%)となっている(11年10月20日の日本貿易振興機構発表より)。