運輸通信省、マニラ国際空港(NAIA)売却を検討
2011/10/20
JICAは比首都圏空港戦略調査プロジェクト実行中
運輸通信省(DOTC)はマニラのニノイ・アキノ国際空港(NAIA)を売却し、パンパンガ州クラークのクラーク国際空港を新たな主要国際空港にすることを検討している。
ロハス運輸通信相は、旅行ウェブサイト「The Guide to Sleeping Airports」の2011年ワースト・エアポート投票で築30年のNAIA第1ターミナルがワースト1に選ばれたのを受け、10月18日報道陣との座談会で、「NAIAを売却しその収益をフィリピンの長期的な空港ニーズに対応するクラーク国際空港の改修コストに当てることを検討している」と発言。しかし、「まだ単なる計画の段階で2、3年で実現できるものでもない」としたうえで、「マニラとクラークの両空港を維持するかNAIAを売却しクラーク国際空港のみを残すかは成長の度合い次第」と説明した。
同省の調査によると、NAIAはすでに限度に達しているが、物理的に拡大する余裕がない。NAIAの全ターミナル(第1、2、3と国内線)の旅客収容能力は合計で年間3,200万人だが、年内には3,000万人に達すると予想される。
ロハス大臣は、NAIA民営化の収益を最大25億米ドルと見込んでおり、これをクラークの新国際空港建設資金として充当できると考えている。また、「NAIA周辺の土地を造成するという選択肢は、候補地としてリサールのタリム島以外にないことから、状況にそぐわないうえ、空港拡大計画には巨額の資金が必要となる一方、開発費用がより少ないクラーク国際空港はよい選択肢である」と説明した。また、北鉄道プロジェクトの実施で、クラークはよりアクセスしやすい場所になるという。
「The Guide to Sleeping Airports」の2011年ワースト・エアポートの第2位はパリ・ボーヴェ空港、3位レイキャビーク・ケフラビク空港、一方、ベスト・エアポートの第1位はシンガポールのチャンギ空港、2位はソウルの仁川空港、3位は香港となっている(11年10月19日のフィリピン運輸通信省などより)。
なお、マニラ首都圏の空港を巡る様々な動きや構想が交錯する中で、JICAはフィリピン政府の要請を受けて、大首都圏空港戦略調査プロジェクト(期間:2010年11月~2011年11月)を実施中である。
このプロジェクトの目的はマニラ首都圏での航空混雑の緩和を図るため、マニラ国際空港 (NAIA)とクラーク国際空港 (DMIA)の適切な役割分担やそれに基づく両空港の機能向上に係る戦略を作成することである。プロジェクトの骨子は1.大首都圏における空港整備の課題分析、2.大首都圏における最適な空港システム計画の策定、3クラーク、マニラ両国際空港の整備計画及び関係機関のアクションプランの作成となっている。
首都圏に位置するマニラ国際空港(NAIA)は、同国の国際線旅客数の80%以上が集中し、また多くのジェネラルアビエーション(小型機)も運航している等混雑の状況にある。また、既にピーク時の滑走路容量に余裕が無く、安全運航の確保の面からも問題が指摘されている。しかしながら、狭隘な空港用地の周辺には、既に住宅、道路、河川等が隣接しており滑走路の増設は困難であることが確認されている。
一方で、1994年の大統領令174号では、同圏に位置するクラーク国際空港(マニラの北西約100kmに位置)をフィリピンの国際ゲートウェイ空港として位置付ける旨の方向性が示された。同空港は、国際空港としても、滑走路容量に余裕があり、現在、LCC(ローコストキャリア)、整備、貨物等の事業者が展開している。
クラーク国際空港については、ラモス政権時である1994年の大統領令174号にて、国際ゲートウェイ空港として位置付ける旨の方向性が示されているものの、その後現在まで明確な政策的枠組みが存在していない。
各空港の視点では、独自のマスタープランや「全国空港整備戦略マスタープラン調査(JICA、2004~2006年)」等があるものの、今後の需要増加に対し、両空港を含む大首都圏全体としての対応方針は明確になっていない。
このような背景のもとフィリピンは、日本に対し、交通計画の一環として、総合的な観点から開発調査を行い両空港の役割分担を含めた空港整備戦略作成に係る要請を行った。
これを受けJICAは、2010年3月に詳細計画策定調査を実施し、フィリピン要請、調査範囲、内容等を確認した上で、2010年3月12日、運輸通信省との協議を終了し、実施細則(I/A)及び協議議事録(M/M)の署名を行った。等プロジェクトはこれらの合意に基づき実施されている。今年11月に最終報告書が提出される予定である(JICA資料より)。