アキノ大統領、日本で反政府勢力トップと極秘会談
2011/08/05
MILFアルハジ・ムラド議長と初のトップ会談実現
歴史的会談への日本政府等の尽力に謝意
アキノ大統領が8月4日に、極秘裏に日本を訪問、反政府勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)のアルハジ・ムラド・エブラヒム議長と非公式会談した。会談場所は成田空港近くのホテルであった。
アキノ大統領は、8月4日午後6時ごろ(フィリピン側発表時間、以下同様)に成田に到着、会談は午後8時30分頃から開始され約2時間に及んだ。アキノ大統領がマニラに向けて日本を離れたのは、8月5日午前10時頃であった。まさに会談のためだけの訪日であり、会談後マニラへとんぼ帰りというようなスケジュールであった。
和平プロセス担当大統領顧問室(OPAPP)のマービック・レオネン主席交渉者によると、この会談では、政府とNILFの和平交渉の枠組みに関しての率直かつ真摯な意見交換が行われるとともに、平和的解決に向けての可能な手段などが模索された。そして、両者は和平交渉を迅速化させ、アキノ政権時に和平合意、その合意事項に着手することで同意したとのことである。
14年間に及ぶ比政府とMILFの和平交渉の歴史において、大統領がMILFトップと直接会談するのは初めてのことである。フィリピン政府は、この歴史的会談実現への尽力やこれまでの一貫した和平交渉支援に対し、日本政府やマレーシア政府に対し厚く感謝すると表明した(11年8月5日のフィリピン和平プロセス担当大統領顧問室発表より)。
一方、松本外務大臣は8月5日、フィリピン・ミンダナオ和平に関するアキノ大統領と、MILF議長との非公式会談に関して、以下のような歓迎の談話を発表した。
2.日本は、今回の会談がミンダナオ和平プロセスを円滑に進めていく上で有意義な機会となったことを心から歓迎する。両当事者のトップ同士による会談は今回が初めてであり、日本でこの会談を開催したいとのフィリピン政府からの要請を受け、日本政府としてこの会談の開催を支援したものである。フィリピン政府の発表においても日本に対する謝意表明があり、日本として今回の会談の実現に貢献できたことを喜ばしく思う。
2.日本は、今回の会談の成果を踏まえ、今後も両当事者による真摯な話合いが継続され、ミンダナオ和平の最終合意が早期に達成されることを強く希望しており、国際監視団(IMT)への開発専門家派遣、元紛争地域における草の根・人間の安全保障無償資金協力の集中的実施(J-BIRDプロジェクト)等を通じたミンダナオ地域の復興・開発支援や国際コンタクト・グループ(ICG)による支援を通じ、引き続きミンダナオ和平プロセスに積極的に貢献していく。
<ミンダナオ和平問題について>
(1)フィリピン政府とミンダナオを拠点とするモロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平プロセスは、約40年にわたる武力衝突を経て、2003年の停戦合意、2004年からの国際監視団(IMT、団長:マレーシア)の活動により進展。2008年8月、懸案の土地問題の解決をめぐる国内調整に失敗して武力衝突が再燃したが、2010年2月に和平交渉が再開された。両当事者のトップ同士による会談は、今回が初めてである。
(2)日本は、ミンダナオ和平がアジアの平和と繁栄に不可欠であるとの認識の下、IMT社会経済開発部門への開発専門家派遣、元紛争地域への人間の安全保障・草の根無償資金協力の集中的実施、和平交渉にオブザーバー参加して助言を行う国際コンタクト・グループ(ICG)への参加等を通じ、ミンダナオ和平プロセスの進展及びミンダナオ地域の復興・開発に貢献してきている。特に、日本支援案件の総称「J-BIRD(Japan-Bangsamoro Initiative for Reconstruction and Development)」(Bangsamoroはミンダナオのイスラム教徒を指す。)は、ミンダナオの住民の間でも広く知られている(11年8月5日の日本外務省発表より)。