マイニラッド・ウォーター、水道料金裁判で国に勝訴

政府に値上げ遅延による損失34億ペソ支払い命令

2017/07/26

 1977年のマニラ首都圏上下水道局(MWSS)の首都圏上下水道事業民営化においてその事業を引き継いだ民間水道企業2社とMWSSとの間で、2013年に水道料金改訂に関して対立が生じ、国際商業会議所(ICC) 国際仲裁裁判所の仲裁を依頼するまでに至った。2014年末に、その仲裁判断が出されたが、MWSSの最終命令が、国際仲裁の判断と異なるものであることなどから混乱が続いてきている。

 首都圏西半分で上下水道事業を行っているマイニラッド・ウォータ・サービス社(マイニラッド)は、2013年6月に、平均基本料金1立米あたり5年間で8.58ペソ(28.35%)の値上げ申請を行ったが、MWSSはその値上げ申請を却下、逆に5年間で同1.46ペソ(4.82%)、年間同0.29ペソ(0.964%)の値下げを命じたのである。この大きな相違を解決するために、マイニラッドは国際仲裁裁判所に仲裁を依頼した。

 国際仲裁裁判所は2014年12月末に、マイニラッドの平均的な家庭の水道基本料金に関して9.8%値上げすることを認める判決を下した。すなわち、月間20立米の水を利用する家庭の1立米当たりの料金は2013年の31.28ペソから3.06ペソ値上げされ、34.34ペソとなる筈であった。しかしMWSS は、仲裁に基づくマイニラッドの1立米当たり3.06ペソ値上げの実施を拒否、4月21日には、実質0.36ペソの値下げを命じたという経緯がある。

 上記の国際仲裁裁判所によって認められた水道料金の値上げが実現しないことによるマイニラッドの収入ロスは、2015年時点で49億ペソに達したとのことである。上記の様に、MWSSは、仲裁に基づくマイニラッドの値上げの即時実施を拒否、それ以降も値上げ申請が棚上げ状態となっている。マイニラッドは、正当な値上げをMWSSによって棚上げされている、すなわち規定違反として、政府に対し、まず、値上げ申請棚上げによる2013年1月から2015年3月末までの損失分約34億4,000万ペソの賠償請求を行い、裁判所へ提訴したという経緯がある。

 このほど、最高裁判所はこの係争に関する判決を下し、政府に対し、値上げ申請棚上げによる2013年3月11日から2015年3月10日までの損失分約34億2,469万ペソの支配いを命じた。さらに、マイニラッドは2016年9月1日以降の損失分の補てんを受ける権利もあるとした。
 
 なお、マイニラッドは、1997年のフィリピン政府との民間委託契約(コンセッション契約)に基づき、マニラ首都圏上下水道局(MWSS)から引き継いだマニラ首都圏の西地区全17市区をサービスエリアとして、浄水や下水処理サービスの提供、上下水道管路網の維持管理、検針や料金徴収までを含むフルコンセッション事業を行っている。サービスエリア内の人口は、フィリピンの人口のおよそ一割に相当、単一コンセッション契約に基づく民間水道事業としては、サービスエリア内の人口規模において世界最大級である。

 現在マイニラッド社は、フィリピンの有力コングロマリットであるメトロ・パシフィック・インベストメンツ(MPIC)、DMCIホールディングス(DMCI)、丸紅との合弁企業となっている。出資比率はMPIC52.8%、DMCIホールディングス25.3%、丸紅20%。2016年末の売上高は約200億ペソに達している(17年7月25日のフィリピン証券取引所回覧04571-2017号などより)。