フィリピンでは、ハンバーガーのジョリビーが、国民食とまで称されるほどの圧倒的な支持を得ている。マクドナルドがハンバーガー市場でトップになれない唯一の主要国がフィリピンでもある。ジョリビーのシェアは約50%と見られる。
ジョリビーはフィリピン最大のファ ストフード企業ジョリビー・フーズ(JFC)によって運営されている。2017年6月末のJFCがマジョリティーを有する事業におけるフィリピン国内店舗数は2,701店に達している。内訳はハンバーガーのジョリビー1,005店、中華のチャウキン496店、ピザのグリーンウイッチ257店、ケーキ・ベーカリーのレッドリボン395店、鶏肉・バーべキュ-のマン・イナサル470店、バーガー・キング78店 となっている。
海外店舗数は869店舗で、JFCグループが経営を支配する事業の国内外総店舗数は3,570店舗に達している。また、40%出資の米国「スマッシュバーガー」362店など50%以下の出資の合弁事業店舗数は378店。これらを含めた総店舗数は3,948店舗となる
上記のように、ハンバーガー・チェーンのジョリビーの2017年6月末の国内店舗数は1,005店で、前年同月末の939店から66店、率にして7%の純増となっている。
一方、マク ドナルド・フィリピン(比マクドナルド)は、当地の有力持株会社アライアンス・グローバル・グループ(AGI)関連会社のゴールデンアーチス・デベロップメント(GADC)によって展開されている。第1号店は1981年にオープンした。このほど発表されたAGIの2017年第2四半期事業報告書によると、2017年6月末の比マクドナルド店舗数は533店で、前年同月末の494店から39店、率にして8%の純増となった。
このようにジョリビーの国内店舗数1,005店は、比マクドナルドの約1.9倍であ り、その差はなかなか縮小せず、むしろ拡大傾向にある。ジョリビーのグループ企業である比バーガー・キング78店を加えればその差はさらに拡大、ジョリビー連合が1,083店で比マクドナルド533店の2倍強となる。
フィリピンにおいて、ジョリビーがマクドナルドを圧倒している理由は、フィリピン人の食習慣や嗜好を的確に把握したメニューを開発、提供していることで あると考えられる。まず、フィリピン人は甘い味付けを好むが、ハンバーガーのドレッシング、スパゲティー類などは、マクドナルドよりかなり甘い。外国人には甘すぎる味付けと感じられるが、フィリピン人には、基本的には、味や規格が世界標準で統一されたマクドナルドのメニューよりは遥かに好まれていると思われる。マクドナルドも、一部ローカル好みのメニユーを取り入れるようになってはいるが、フィリピンの大衆を虜にするには至っていない。
また、フィリピン人はコメが大好きで三食ともに米食というパターンが多い。また、ファースト・フードレストランといえども、スナックではなく本格的な食事を好む消費者が多い。そこで、ジョリビーはライス付きの割安なセットメニューを数多く用意し、コメ好きのフィリピン人の心をしっかり捉えている。
食の基本である味付けでは、フィリピン人の嗜好を徹底的に重視する一方で、セントラル・キッチンの高度活用、店舗スタッフの作業や顧客対応などは米国方式のマニュアルに沿うなど効率性を追求していることもジョリビーの強かさであるといえよう。さらに、子供達の誕生パーティーなどイベント会場を提供、宅配、海外フィリピン人就労者(OFW)から留守宅や知人・友人へのプレゼント宅配、グループ内異業種チェーンとのシナジー効果最大化、海外展開拡充、蜜蜂を模したマスコットフル活用などのマーケティング戦略強化に余念がないことも成功につながっている(ジョリビーフーズとアライアンス・グローバル・グループの事業報告書などより)。