JICAとADBのアジアインフラ信託基金、本格始動

再生可能エネ事業等に16億ドル超の資金提供へ

2017/10/04

   アジア開発銀行(ADB)は、アジアインフラパートナーシップ信託基金(LEAP: Leading Asia’s Private Infrastructure Fund)の設立1年目にして、2件のプロジェクトに対し2億1,000万ドルを超える融資を承認した。これに加えて、ADBの通常資本から2億6,450万ドル、協調融資パートナーから8億9,000万ドル、合計約14億ドルの資金が提供される見込みである。

 ADBは、アジア・太平洋地域での民間によるインフラ整備のため、LEAPからの追加的な融資や出資により5億ドルを超える資金提供の準備を進めている。可能性がある案件は、インド、インドネシア、ミャンマー、パキスタン、フィリピンそしてタイなどでのプロジェクトである。

 LEAPは、アジア・太平洋地域の民間によるインフラ整備を目的としたADBの協調融資専用ツールの一つである。この信託基金は、国際協力機構(JICA)が15億ドルを出資し、2016年8月に設立した。ADBの資本と民間パートナーの資本とを合わせて、少なくとも60億ドルの資金が提供でき、これによりADBは、質の高い持続可能なインフラへの支援を促進することができる。

 JICAの神崎康史理事は、「基金の初期段階の進捗には満足している。設立から12か月の間ですでに、アジア・太平洋地域の民間によるインフラ整備推進のため、目に見える効果を上げている」とコメントした。

 この1年の間に承認された2件のLEAPによる融資案件は、どちらもすでに建設段階にある。インドの「リニュー・クリーン・エネルギー・プロジェクト」は、テランガナ州での48メガワットの太陽光発電サブプロジェクトとカルナータカ州での110メガワットの風力発電サブプロジェクトの契約に至った。インドネシアでのムアララボ地熱発電プロジェクトは掘削、二次的作業、建設が始まったところである。

 ADBのディワカール・グプタ民間部門・協調融資業務担当副総裁は、「LEAPは、ADBが開発途上加盟国に提供することのできる影響力を高めるもので、すでに実施されている再生可能エネルギー・プロジェクトはアジア・太平洋地域の低炭素経済への移行を助けている」と述べた。

 LEAPは電力(特に再生可能エネルギー、省エネ)、水、都市インフラ、運輸、情報通信、そして保健分野における質の高い民間セクターのインフラ案件を対象とし、民間セクターが様々な形態(官民連携パートナーシップ(PPP)、コンセッション、法人等)を通じて実施するインフラ事業に対して、出融資による支援を行う。

 ADBによれば、アジアのインフラ資金需要は年間8,000億ドルに上ると見られており、供給とのギャップを解消する上で、民間セクターと開発機関の資金を活用することは不可欠となっている。JICAは、海外投融資を活用してLEAPへの出資を行い、アジア及び大洋州地域の質の高いインフラ案件に対する、民間部門向け出融資業務の事業拡大を図る。

 今後もJICAは、各国・国際機関と協働し、「質の高いインフラ投資」を推進し、「持続可能な開発目標(SDGs)」も踏まえた開発途上国・地域の経済社会開発に貢献して行く方針である(17年10月3日のアジア開発銀行駐日代表部発表などより)。