比ファミリーマート苦戦、活性化を模索
大株主のアヤラやSSI、売却も検討か
2017/10/10
フィリピンのコンビニエンス・ストア業界もマニラ首都圏中心に競争が激化しつつある。また、マニラ首都圏を中心とする店舗家賃の上昇にくわえ、年々交通渋滞が酷くなり配送に支障をきたすようになっており、店舗網拡大のネックとなっている。
現在は、業界断トツのセブン・イレブンをミニストップなどが追いかけようとする構図になっている。そして、2013年にはファミリーマートとサークルKが進出、 2015年3月にはローソンもフィリピン1号店をオープンした。 2015年央ごろまでは、各チェーンとも店舗網を順調に拡大させてきたが、2016年は、店舗数を減らすチェーンも見られた。特に、ファミリーマートの急ピッチの店舗減少ぶりが目立つ。
2012年に、ルスタンで知られる高級小売り企業のSSIグループとアヤラ・グループ(アヤラランド)の折半合弁企業であるSIAL CVSリテイラーズ社(SIAL)は、日本のファミリーマート、伊藤忠商事とともに、フィリピンにおけるファミリーマート店舗の展開を目的に、「フィリピンファミリーマートCVS社」(PFM)を設立した。PFMへの出資比率はSIAL60%、ファミリーマート37%、伊藤忠商事3%である。前述のように、SIALはSSIとアヤラグループの折半合弁企業であることから、SSIとアヤラグループのPFM出資比率は各々30%ということになる。
フィリピンファミリーマート1号店は、2013年4月にマニラ首都圏マカティ市にオープンした。店舗網は2015年前半までは順調に増加、2015年5月に100店の大台、2015年末には120店に到達した。ただし、業界の競争激化や出店政策の見直しなどにより、2015年後半以降は出店ピッチが急鈍化、2016年から減少傾向となっている。2017年8月末の店舗数は69店(日本側発表数字、以下同様))で、前年同月末の101店から32店減少、ピークの2015年末の120店からは51店、率にして42.5%減少している。
SSIの年次報告書によると、SSIの2016年のフィリピンファミリーマート事業の損失額は前年比82%増の1億4,580万ペソ(SSI出資分、閉鎖費用含む)とのことであった。SSIのフィリピンファミリーマート(PFM)への出資比率は30%であることから、2016年のィリピンファミリーマート全体の損失額は約4億9千万ペソであったと推定される。SSIの2017年上半期のPFM事業の損失は前年同期比22%減の3,700万ペソへと縮小したとも報告されているが、収益面でもかなり厳しい状況が続いてきている。
このような状況下において、10月9日付けインクワイアラー紙電子版が、「SSIやアヤラグループは、PFMを売却することを検討している」と報じた。この報道の正否を問うフィリピン証券取引所(PSE)に対し、アヤラランドやSSIは10月9日、「競争が厳しいコンビニエンス事業を強化することを検討してきているが、具体策は決定していない。合弁相手企業と様々な事業強化オプションの検討を行っているところである。具体的な的な決定があれば、速やかかつ適切な情報公開を行う」と回答した((17年10月9日のフィリピン証券取引所回覧06050-2017号などより)。 。
フィリピンのファミリーマート店舗数推移(月末値)
(出所:株式会社ファミリーマート資料、ウエブサイトより作成)
なお、業界首位の比セブンイレブンの店舗数は増加傾向を辿っており、2017年6月末で2,087店となり、前年同月末の1,740店から347店、率にして20%増加している。2017年6カ月間では92店の純増となっており、トップの座を強固にしているといえよう。7月以降の店舗数は正式には発表されていないが、独走といえる状況である。
フィリピンの主な日系コンビニ店舗数(比セブンイレブンは直接的には台湾プレジデント・チェーン・ストアの傘下)
(出所:各社資料より作成、ミニストップ、ファミリーマートは日本側発表数値、ローソンはサイト等からの推計値)
現在は、業界断トツのセブン・
2012年に、
フィリピンファミリーマート1号店は、
SSIの年次報告書によると、
このような状況下において、
フィリピンのファミリーマート店舗数推移(月末値)
年 | 2016年 | 2017年 | ||||||||||||||||||
時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
店数 | 111 | 108 | 104 | 104 | 103 | 102 | 101 | 101 | 101 | 101 | 98 | 99 | 98 | 95 | 81 | 76 | 73 | 72 | 72 | 69 |
なお、
フィリピンの主な日系コンビニ店舗数(
年・月 | 12年末 | 13年末 | 14年末 | 15年末 | 16年3月末 | 6月末 | 9月末 | 12月末 | 17年3月末 | 6月末 | 7月末 | 8月末 |
セブンイレブン | 829 | 1,009 | 1,282 | 1,602 | 1,655 | 1,740 | 1,840 | 1,995 | 2,031 | 2,087 | N.A. | N.A. |
ミニストップ | 337 | 386 | 454 | 519 | 518 | 513 | 501 | 499 | 493 | 491 | 490 | 491 |
ファミリーマート | 0 | 31 | 87 | 120 | 104 | 102 | 101 | 99 | 81 | 72 | 72 | 69 |
ローソン | 0 | 0 | 0 | 16 | 17 | 19 | 24 | 29 | 30 | 32 | 32 | 32 |