比ファミリーマート、フェニックス石油による買収完了

ファミマ、伊藤忠、アヤラ、ルスタンが出資や運営撤退

2018/01/12

    石油製品販売大手フェニックス・ペトロリアム・フィリピンズ(PNX、本社:ダバオ市、フィリピン証券取引所{PSE}上場)による「フィリピンファミリーマートCVS社」(PFM)買収が、1月11日までに完了した。

 2012年、ルスタンで知られる高級小売り企業のSSIグループ(SSI)とアヤラグループ(アヤラランドの100%子会社ALIキャピタルを通じて)との折半合弁企業であるSIAL CVSリテイラーズ社(SIAL)は、日本の株式会社ファミリーマート(ファミマ)、伊藤忠商事とともに、フィリピンにおけるファミリーマート店舗の展開を目的に、「フィリピンファミリーマートCVS社」(PFM)を設立した。PFMへの出資比率はSIAL60%、ファミリーマート37.6%、伊藤忠商事2.4%であった。SIALはSSIとアヤラグループの折半合弁企業であることから、SSIとアヤラグループのPFM出資比率は各々30%であった。
 
 フィリピンファミリーマート1号店は、2013年4月にマニラ首都圏マカティ市にオープンした。店舗網は2015年前半までは順調に増加、2015年5月に100店の大台、2015年末には120店に到達した。ただし、業界の競争激化や出店政策の見直しなどにより、2015年後半以降は出店ピッチが急鈍化、2016年から減少傾向となっている。2017年12月末の店舗数は66店(日本側発表数字、以下同様))で、前年同月末の99店から33店減少、ピークの2015年末の120店からは54店、率にして45%減少となった。

 このような状況下において、PNXは2017年10月、「SIAL、ファミマ、伊藤忠商事からPFM全株式(100%)を取得するとの覚書を締結した」と発表した。PNXによるPFM株式100%取得はフィリピン競争委員会(PCC)の承認が前提であるが、PCCは1月3日、PNXによるPFM株式100%取得を承認した。そして、PNXによるPFM完全買収が実現した。ファミマはフィリピンでのコンビニ出資・運営からは撤退することになった。また、SSIとアヤラグループも比ファミリーマート事業から撤退。ファミマは、PFMとの間で2018年1月末にも新ライセンス契約を締結、フィリピン事業をライセンス展開へと転換する計画である。

 なお、PNXは、ドゥテルテ大統領の地盤であるミンダナオ島ダバオ市を拠点とする有力財界人のデニス・ウイ氏に率いられている。デニス・ウイ氏は、持株会社ウデンナのもとで、石油販売、海運、ロジスティクス、不動産開発などを幅広い事業を展開している。海運事業においては、2017年8月にPSEに新規上場したチェルシー・ロジスティクス(チェルシー)を中心に、業界トップの地位を築いている。デニス・ウイ氏はチェルシーの会長である。
 
 デニス・ウイ氏は、PFMを買収するPNXの社長兼CEOでもある。PNXの旧社名はダバオ・オイル・ターミナル・サービス社で、ミンダナオで、石油製品、潤滑油、化学製品などの販売を行っていた。現在では有力石油販売企業となっており、全国に所有するガソリンスタンド数は、創業時の2005年の5店から、2012年末300店、2013年末368店、2014年末418店と急ピッチで増加、2016年末には505店、2017年10月末には518店に達している。PNXはガソリンスタンドでのファミリーマート展開を計画している。また、現時点でファミリーマート未進出のミンダナオ島で積極展開する方針でもある(18年1月11日のフィリピン証券取引所回覧00156-2018号などより)。