東京海上日動、リスクマネジメントセミナー開催

日本人駐在員の危機管理や誘拐リスク対策

2018/10/18

 1017日にマニラ首都圏マカティ市RCBCプラザにおいて、東京海上日動火災保険(東京海上日動)グループによるリスクマネジメントセミナーが開催された。身近な問題であり関心が高く時宜を得たテーマだったこともあって、多数が参加、質疑応答も活発に行われるなど盛況となった。

 

 当日は東京海上日動火災マニラ主席駐在員の辻 一典氏の開講挨拶に続き、ジェイ・エス・エス危機管理コンサルタントの佐伯 武氏による講演「フィリピンにおける日本人駐在員の危機管理」が行われた。フィリピンでは、イスラム過激派組織や共産系反政府武装組織等が活動し、これまで、無差別爆弾テロ事件、身代金目的誘拐事件、企業や富裕層に対する恐喝・襲撃等のテロ・犯罪が数多く発生している。このようなフィリピンにおける危機管理上のポイント、テロ・犯罪に巻き込まれないための実用的な対策、緊急事態発生時の対応などが解説された。非常に具体的でわかりやすい事例が多数盛り込まれていた。

 

 次に、ミラーインシュアランス サービス(シンガポール)社の横山 修一氏による講演「誘拐リスクの実態とその対策としての保険」が行われた。世界各地では依然として誘拐事件が多発している。とりわけ誘拐件数が多いフィリピンにおいては、事故防止対策だけでなく、事故が発生してしまった後の企業としての対応策も重要になっている。実際の事例にもとづく誘拐リスクの実態と、リスクヘッジ手段としての保険ついての解説が行われた。イスラム過激派組織ISILに誘拐され殺害された後藤健二さんの事例において、指定テロリストへの身代金支払いは国際法上厳重に禁止されており、テロリストへの身代金支払いによる事件解決は不可能な事案であることなどもわかりやすく説明された。

 

 なお、東京海上としてのフィリピン進出の歴史は古く、1901年に英国系商社を総代理店として営業開始した。太平洋戦争敗戦により一時営業停止を余儀なくされたが、戦後は、フィリピンの有力財閥であるユーチェンコ・グループとの協働により強力な事業基盤を築いている。

 

 東京海上ホールディングス(東京海上)2014年、ユーチェンコ・グループの有力損害保険会社であるマラヤン・インシュアランス社への出資比率を引き上げた。東京海上は、それまで、子会社の東京海上アジアを通じて、マラヤン・インシュアランス社に11.27%の出資を行ってきたが、経済成長の目覚ましいフィリピンでの損害保険事業の拡大やユーチェンコ・グループとの提携強化などのため、ユーチェンコグループからマラヤンインシュアランス社の株式8.73%を取得し出資比率を20%に引き上げた。ユーチェンコ・グループとの提携は約55年に及ぶ。

 

 なお、マラヤン・インシュアランス社は、フィリピン損害保険業界のトップクラス企業である。保険料収入などにおいて、三井住友海上が49%出資するBPI/MSインシュアランス、損保ジャパンの合弁相手であるプルーデンシャル・ギャランティー&アシュアランス(PGA)などと首位を争っている。
 

  損保業界の2017年計上総保険料収入上位5社(単位:千ペソ)

順位 社名 計上総保険料
1 マラヤン インシュアランス 9,331,760
2 プルーデンシャル ギャランティー&アシュアランス(PGA) 8,948,938
3 パイオニア インシュアランス&シュアティ 8,024,093
4 BPI/MSインシュアランス 5,942,872
5 チャーター ピン アン 5,673,605
 (出所:フィリピン保険委員会速資料より作成)
 
 損保業界の2017年末の総資産上位5社(単位:千ペソ)
順位 社名 総資産額
1 マラヤン インシュアランス 34,365,090
2 パイオニア インシュアランス&シュアティ 25,245,214
3 プルーデンシャル ギャランティー&アシュアランス(PGA) 13,072,358
4 BPI/MSインシュアランス 12,759,143
5 チャーター ピン アン 11,783,676

 (出所:フィリピン保険委員会速資料より作成)