日本、フィリピンの経済社会開発を多面的支援

和平定着や鉄道事業向上等に36億円の無償協力

2019/02/22

 2月21日、大阪において、羽田浩二駐フィリピン日本国大使とホセ・カスティリョ・ラウレル五世フィリピン共和国大使との間で、無償資金協力「バンサモロ地域社会経済インフラ緊急整備計画」、「上水供給用機材の整備による、安全な飲料水へのアクセス改善支援(経済社会開発計画)」及び「鉄道訓練機材の整備による、鉄道事業サービスの質の改善支援(経済社会開発計画)」(合計供与額35億6千万円)に関する交換公文の署名及び書簡の交換が行われた。

<対象案件の概要>
(1)職業訓練施設の再建・整備等による、ミンダナオ和平定着・社会安定化支援
  (無償資金協力「バンサモロ地域社会経済インフラ緊急整備計画」:供与限度額18億円)

 昨年7月に成立されたフィリピンのミンダナオ和平に関する「バンサモロ基本法」に基づき、バンサモロ自治政府の発足に向けて準備が進められている。他方、当該地域は、長年の紛争によるインフラ投資の不足等が影響し、フィリピン国内で開発が最も遅れた地域となっている。武装勢力の戦闘員や、過激派への支持層はこうした貧困率の高い地域に多く、脆弱なミンダナオにおける平和と安定は、当該地域・国のみならずアジア全体の平和と安定に寄与することから、当該地域住民の生活改善や生計向上に資するインフラ開発を早期に実現することが急務となっている。
 この協力では、当該地域において、マラウィ市人材開発センターの再建及びその他2カ所の職業訓練センターへの機材調達等を通じて、武装組織からの除隊兵士等が地域の産業ニーズに応じた技術的・職業的能力を身につけるための支援等を行うものである。この協力により、これら施設の研修修了生を年間約4,000名輩出することや、支援対象施設による公共サービスの質の向上、バンサモロ地域の生計向上、社会の安定化への貢献が期待される。

(2)上水供給用機材の整備による、安全な飲料水へのアクセス改善支援
  (無償資金協力「経済社会開発計画」:供与額5億6千万円)

 バンサモロ地域において安全な水にアクセスのない世帯は42%に上り、フィリピン全体平均の15%を大きく上回っている。安全な水へのアクセスが確保されていないことによって、特に島嶼部において出血性下痢、腸チフス、A型肝炎等が蔓延しており、安全な水へのアクセスは喫緊の課題となっている。
 この計画において、日本で製造された上水供給用機材(井戸掘削機、地下水探査機等)を供与することにより、これまで安全な水へアクセスできていなかった島嶼部等の約1万世帯の住民の飲料水へのアクセス改善を図るとともに、当該地域の社会の安定化に寄与することが期待される。

3)鉄道訓練機材の整備による鉄道事業サービスの質の改善支援
  (無償資金協力「経済社会開発計画」:供与額12億円)

 マニラ首都圏は620㎢と比較的小さな都市地域であるにも関わらず、人口が年間1.8%の割合で増加しており、交通渋滞が深刻化している。こうした状況に対応するため、ODA事業を含む数多くの鉄道事業が計画・実施されている。他方、今後10年間で1万人ほどの鉄道事業に携わる人材も育成する必要があるが、各事業者の鉄道運行に係る業務遂行能力に非常にばらつきがあり、平均的水準は決して高いとはいえない。質の高い人材を持続的に育成することは喫緊の課題となっている。
 
 この計画において、日本で製造された鉄道訓練機材(鉄道シミュレーター等)を供与することにより、年間約1,800人規模の人材の育成を図るとともに、安全かつ安定した鉄道運営を確保することで通じたフィリピンの経済社会開発に寄与することが期待される。

 上記の案件は、2017年1月の日・フィリピン首脳会談で安倍総理大臣から表明した、今後5年間で行われる予定のODA及び民間投資を含めた1兆円規模の支援の一環であるとともに、同年10月に日・フィリピン首脳会談の場で発表した「日フィリピン共同声明」の具体化の一つである(19年2月21日の日本外務省発表より)。