ローム、電力損失ゼロの小型非接触電流センサを開発

愛知製鋼のMI素子開発技術との融合、フィリピンで後工程

2019/03/11

 ローム(本社:京都市)は、大電力を扱うデータセンターのサーバーや太陽光発電システム、バッテリー駆動のドローンなど、電流で動作状況を検知したいあらゆる産業機器・民生機器に向けて、業界で初めて非接触検知、電力損失ゼロ(発熱レス)、超小型の3つを同時に実現した非接触電流センサ「BM14270MUV-LB」を開発した。

 「BM14270MUV-LB」は、業務提携を進める愛知製鋼のMI素子(Magneto-Impedance 素子)開発技術と、ロームが得意とする半導体生産技術、センサ制御技術が融合することで生まれた新製品である。高感度・低消費電流のMI素子を採用した電流センサとして、電流センサ内に配線を引き込む必要のない非接触検知を可能にし、同時に業界最小のサイズ(3.5mm角)・低消費電流動作(0.07mA、従来品比100分の1)を達成している。
 なお、MI素子は、愛知製鋼が世界で初めて開発した特殊なアモルファスワイヤを使用する素子のことである。磁気や磁場を検知することができる。低消費電流で高感度検知を実現できるため、IoT化を加速する新技術として様々な分野への応用が期待されている。

 また、「BM14270MUV-LB」はノイズに対する外乱磁場キャンセル機能も搭載しており、シールド対策なしで基板実装することが可能である。さらに、A/Dコンバータ内蔵のデジタル出力としたことで、マイコンの負担を減らし、より手軽に電流をモニタすることができる。これらにより、大電力を扱う産業機器からバッテリー駆動する小型機器まで、あらゆるアプリケーションの電流検知を高信頼かつ手軽に行うことが可能である。

 なお、本製品は2019年2月よりサンプル出荷(サンプル価格 1000円/個:税抜)を行っており、2019年7月から当面月産10万個の体制で量産を開始する予定である。生産拠点は、前工程がローム・アポロ(福岡県)、後工程がROHM Electronics Philippines Inc.(ローム エレクトロニクス フィリピン、所在地:カビテ州カルモナ)になる。

<背景>
 近年、世界的な省エネ・安全意識の高まりや環境規制によって、大電力を扱うデータセンターのサーバーや太陽光発電システムなどで、電力の見える化と安全対策が求められている。それに伴い、電流センサの需要が年々高まっているが、従来のホール素子を採用した電流センサは、消費電流が多く、感度も低いことから電流センサ内に配線を引き込む必要があるなど、小型サイズと低損失、信頼性を兼ね備えた電流センサは存在せず課題となっていた。ロームは、これらの課題に対して高感度・低消費電流のMI素子を採用することにより完全非接触で電流検知ができる新製品を開発した。

 今後もロームは、産業機器やIoT分野に欠かせない高機能・高信頼のセンサデバイスを開発して、社会の安全・快適に貢献していく方針である(19年3月8日のローム株式会社ニュースリリースなどより)。