比日産自動車躍進、24年ぶり3位の座回復へ

2カ月間の販売74%増加、日本人社長が就任

2019/03/22

 日産自動車(日産)が、フィリピンにおいて事業基盤を再強化、販売シェア回復を果たしつつある。
 
 1990年代の日産のフィリピンでの販売シェアは、1995年まではトヨタ、三菱自動車に次ぐ第3位であった。しかし、その後はさらに減少傾向を辿り、2000年には日産モーター・フィリピン(NMPI)の経営権は台湾の裕隆汽車(裕隆)へと移った。
 
 そして、フィリピンでの日産の乗用車生産・販売は裕隆主導のNMPI、商用車生産・販売は現地企業ユニバーサル・モーター・コロンビア(UMC)へと二分されるに至った。2013年まで、日産はMNPIに約5.4%出資しているだけで、UMCへは全く出資していなかった。すなわち、2000年代は、資本面では2013年まではフィリピンからはほぼ撤退した状況となっていた。
 
 したがって、日産のフィリピンでの販売シェアは一段と低下傾向を辿り、2007年には韓国の現代自動車に4位の座を奪われた。また、いすゞやフォード等にも抜かれ、2012年の販売台数はNMPIとUMC合計で僅か6,404台、シェアは3%台へ低下した。
 
 このような状況下で、日産は2013年12月に、NMPIとUMCと共同で、合弁会社のフィリピン日産(NPI、本社:マニラ首都圏)を設立、2014年に営業を開始した。このNPIは、フィリピン市場を対象とした新たな販売会社としてブランド認知度の向上、シェア急回復を目指したものである。
 
 NPIの資本金は約10億円で、出資比率は日産が51%、UMCとNMPIがそれぞれ24.5%である。すなわち、販売面では、日産が直接主導権を握ったことになる。すなわち、日産がフィリピン市場に本格的に再参入したといえる。なお、UMCとNMPIはそれまで通り、フィリピン市場向けの日産車の生産を続けている。
 
 NPIは、フィリピン国内のブランド、販売マーケティング戦略、そしてディーラー事業の強化を担い、商品ラインナップの拡充と販売・サービスの向上を通じて、ブランド・パワーとセールス・パワーの向上を目指している。すなわち、販売に関しては、それまで二分されていた乗用車と商用車事業が統合され、顧客に幅広い選択や利便性を提供できることになった。そして、積極的な新型モデル投入や販売・サービスネット網の拡充を推進してきている。
 
 このような状況において、最近のシェアは上昇基調を辿っている。2018年は業界全体の新車販売台数が前年比15%減と二桁減少する中で、NPIの販売台数は39.8%増の3万4,952台と大幅増加、シェアも前年の5.3%から8.7%へと急上昇、ついに第4位にまで上昇した。躍進の牽引役となったのは、ピックアップトラック「ナバラ」で総販売台数の46.2%を占めた。また、新発売の中型スポーツ多目的車(SUV)「TERRA(テラ)」も11.9%を占め既に大きな戦力となった。

 そして、2019年2カ月間においても、業界全体の販売台数が依然前年同期比減少という状況において、NPIの販売台数は73.9%増の6,623台へと急増、韓国の現代自動車の6,537台を抜いて、トヨタ、三菱自動車に次ぐ3位に上昇した。この勢いが続けば、24年ぶりの年間3位の座回復が期待できる。

 このNPIの社長が交代する。NPIの現社長のラメシュ・ナラシムハン社長は、4月1日付けで、タイ日産自動車の社長に就任する。そして、ナラシムハン社長の後任として、日本人のNAJIMA ATSUSHI氏の就任が決定している。