世界銀行、今年の比成長率予想マイナス6.9%に

低成長シナリオではマイナス9.9%、タイに次ぐ下落率

2020/09/30

 世界銀行は、9月28日、「東アジア・大洋州地域半期経済報告書」最新号(2020年10月版、副題:封じ込めから復興へ)を発行した。

 世界銀行はその報告書において、「東アジア・大洋州地域の途上国は、新型コロナウイルス感染症の拡大、その封じ込め策による経済への影響、そして危機が引き起こした世界的不況の余波の『三重のショック』を受けている。感染症の世界的流行が今後何年にもわたって成長を阻害し、貧困を拡大することを防ぐためには迅速な行動が必要である」と概括している。

 そして、「現在、ウイルスの封じ込めに成功している一部の国では、国内の経済活動が回復に向かいつつある。しかし、この地域の経済は世界の他の地域に大きく依存しており、世界規模で見ると、需要は依然として低迷している。このため、東アジア・大洋州地域の2020年の経済成長率は、1967年以来最低の0.9%まで落ち込むであろう。中国では、国内消費は低迷しているものの、歳出の拡大や好調な輸出、3月以降の新規感染率の低下等が功を奏し、2020年の経済成長率は2.0%となる見込みだが、その他の域内諸国の経済成長率は3.5%低下する見通し」と予想している。

 この状況は2021年には改善すると見られており、ワクチンの登場と主要国における経済活動の回復と正常化の進展を前提として、経済成長率は中国で7.9%、中国以外では5.1%に上昇する見込みである。しかし、向こう2年間、感染症の流行以前の予測を大きく下回ると予想されている。特に、危機の影響を受けやすい大洋州島嶼国の見通しは暗く、2021年までは危機以前の水準を約10%下回ると見られている。
 
 フィリピンの2020年GDP成長率予想は、ベースラインでマイナス6.9%と予想されている。今年6月時点の予想であるマイナス1.9%から大幅再下方修正されている。このベースライン予想は、2020年第3四半期から新型コロナウイルス感染拡大の影響が弱まり経済が回復に向かうという想定に基づいている。ASEAN諸国のなかでは、タイのマイナス8.3%に次ぐ下落率である。

 新型コロナウイルス感染拡大ピッチがさらに高まり、地域封鎖措置などが長引くという低成長シナリオでは、フィリピンは2020年にマイナス9.9%へ悪化すると予想されている。この低成長シナリオでも、フィリピンは、タイのマイナス10.4%に次ぐ下落率となっている。

 2021年のフィリピン成長率は、ベースラインで5.3%と予想されており、6月時点の6.2%から再下方修正されているが、ベトナムの6.8%、マレーシアの6.3%、ミャンマーの5.9%に次ぐ成長率と見られている。ただし、低成長シナリオでは2.9%成長にとどまると予想されている。