2020年の比即席麺市場16%成長、世界第7位に

主要市場第2位の成長率、巣篭りで日清カップ麺絶好調

2021/05/20

 東南アジア地域は、麺食文化がもともと存在することに加え、近年の継続的な経済成長による即席麺の消費量・販売額が堅調に推移している。

 世界ラーメン協会(本部:大阪府池田市、事務局:東京都新宿区新宿)の5月11日発表によると、下表の様に、フィリピンの2020年の即席麺の総需要は前年比16.1%増の44億7,000万食で世界第7位、ASEANではインドネシアとベトナムに続く第3位の市場となっている。世界総需要約1,064億食のうちの3.8%を占め、一人当たりの年間消費量は40食を突破した。また、16%増という伸び率は、主要市場ではベトナムの29%増に次ぐ第2位の伸び率であった。
 
 即席麺は手頃価格で簡単に食べられることから、フィリピンでは人気は衰えず需要は拡大傾向にある。スープタイプでは特にシーフード味が人気。パンシット・カントンと呼ばれる焼きそばタイプも人気で、カラマンシー(スダチ)味やホットチリ味が好まれている。メリエンダと呼ばれる午後のおやつの習慣があり、メリエンダ向けなどにミニサイズのカップ麺販売も好調である。カップ麺は今後も人口増加や経済力の向上にともない、さらなる市場拡大が期待されている。
 
 なお、日清食品グループは、フィリピンにおいて、ゴコンウェイ・ファミリーの有力食品企業ユニバーサル ロビーナ コーポレーション(URC)との合弁企業「ニッシン ユニバーサル ロビーナ コーポレーション」(ニッシンURC、1996年設立、本社:マニラ首都圏ケソン市)を通じて即席麺事業を展開、カップ麺ではトップ企業となっている。
 
 特に近年は1人当たりのGDPや可処分所得が増加したことにともない、より付加価値の高いカップ麺の需要が高まっており、ニッシンURCの主力製品である「Cup Noodles」の販売は好調に推移している。そして、フィリピン即席麺全体の需要の伸びを上回る成長を続け、下表のように増収増益を続けている。

 特に、2020年の売上高は前年比(以下同様)17%増の74億0,600万ペソ、純利益は25%増の8億9,300万ペソと好調であった。新型コロナウイルス感染対策としての地域隔離措置の下での外出・移動制限措置や外食事業規制(店内飲食禁止、持ち帰りと配達に限定)による家庭内食事(内食)需要や保存食需要、すなわち巣籠り需要が加わったことで、業績向上ピッチに拍車がかかった。2021年第1四半期の売上高も前年同期比7%増の19億2,400万ペソと売上増が続いている。

 なお、フィリピンでの袋麺のトップ企業は、「ラッキーミー」ブランドで知られるモンデ ニッシンである。社名には「ニッシン」が含まれており紛らわしいが、モンデ ニッシンは現地資本企業であり、日清食品など日本企業との資本関係は全くない。モンデ ニッシンは、2021年6月1日にフィリピン証券取引所(PSE)メインボードに新規上場予定である。

 インスタントラーメンの世界総需要と上位10市場(単位:億食)
順位 国/地域 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
1 中国/香港 404.3 385.2 389.6 402.5 414.5 463.5
2 インドネシア 132.0 130.1 126.2 125.4 125.2 126.4
3 ベトナム 48.0 49.2 50.6 52.0 54.3 70.3
4 インド 32.6 42.7 54.2 60.6 67.3 67.3
5 日本 55.4 56.6 56.6 57.8 56.3 59.7
6 米国 40.8 41.2 41.3 45.2 46.3 50.5
7 フィリピン 34.8 34.0 37.5 39.8 38.5 44.7
8 韓国 36.5 38.3 37.4 38.2 39.0 41.3
9 タイ 30.7 33.6 33.9 34.6 35.7 37.1
10 ブラジル 23.7 23.7 22.5 23.9 24.5 27.2
 
合計 974.9 975.2 1,001.1 1,036.2 1,064.2 1,165.6
(出所:世界ラーメン協会資料より作成)

 ニッシンURCの業績推移(単位:百万ペソ)
項目 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 前年比
売上高 4,361 5,103 5,815 6,345 7,406 +17%
EBITDA 777 890 975 1,156 1,472 +27%
純利益 475 559 603 717 893 +25%
総資産 2,281 2,686 2,583 2,583 3,377 +20%
(出所:URC年次報告書や事業報告書などから作成)