フィリピン格付見通し、ネガティブへ引き下げ

フィッチ、中期成長見通しの下振れリスク指摘

2021/07/13

  欧州系の国際的格付機関フィッチ レーティングス(フィッチ)は、7月12日、「フィリピン共和国(フィリピン)の外貨建ておよび自国通貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)、外貨建ておよび自国通貨建て無担保優先債券の格付をトリプルB(BBB)に据え置く」と発表した。

 BBBという格付は、投資適格最低基準であるトリプルBマイナス(BBBー)を一段階上回るステータスであり、「金銭債務の履行能力は概ね十分にあると考えられるが、経営又は経済環境の悪化がこの能力を損なう可能性がある」を意味している。フィッチは、2017年12月、フィリピンの格付をそれまでの(BBBー)から(BBB)へと引き上げ、それ以降、BBBを継続している。

 フィッチは、今回もフィリピンの格付をBBBに据え置いたが、格付アウトルック(見通し)については、これまでの「ステーブル(安定的)」から、「ネガティブ(弱含み)」へと引き下げた。「ステーブル」は、当面格付の変更の可能性が薄い、「ネガティブ」は、今後格付引き下げの方向で見直される可能性高い、すなわち、近い将来格付が引き下げられる可能性があるという意味である。フィッチのフィリピンの先行きに関する見方がやや厳しくなったといえる。

 フィッチは、今回の「ネガティブ」への引き下げの理由に関して、新型コロナウイルス感染禍にともなうフィリピンの中期的な成長見通しに対する下振れリスクと、新型コロナウイルス対策で悪化した財政収支の回復が遅れる可能性などを挙げている。

 なお、世界3大格付機関のなかで、フィッチのフィリピンに対する評価は最も厳しいものとなっている。米国系のスタンダード&プアーズ(S&P)は、今年5月、フィリピンの格付を「トリプルBプラス(BBB+)」、格付アウトルック(格付見通し)を「ステーブル(安定的)」に据え置くと発表した。「トリプルBプラス」は投資適格最低基準の2段階上であり、A格付まであと一歩というステータスである。

 S&Pと同じ米国系のムーディーズ インベスターズ サービス(ムーディーズ)のフィリピン格付は、2014年12月から「Baa2」が継続されている。「Baa2」は他の格付機関の「BBB」と同格である。すなわち、フィッチのフィリピン格付BBBと同様、S&Pの「BBB+」より1ランク低い格付となっている。ただし、ムーディーズのフィリピン格付見通しは「ステーブル(安定的)」となっている。