東芝情報機器フィリピン、超情報化社会に貢献

東芝のHDD売上89%増加、比が主要生産拠点

2021/09/15

 <フィリピンが支える超情報化社会>
 東芝のトレンド等を紹介するToshiba Clipが、「フィリピンが支える超情報化社会」というタイトルの記事において、世界の情報量急増とそれを支えるハードディスクドライブ(HDD)事業などを紹介している。

<世界のデータ量急増、25年に180ゼタバイトへ>
 それによると、IoT(モノのインターネット)やAI、クラウドサービスなどの進展により、世界的にデータ量が爆発的に増加している。世界で作成・複製されるデータ量は2025年までに180ゼタバイト(ZB、1ZB=10億テラバイト)に達する見込みである。物理空間とサイバー空間の融合により、あらゆるウェブ対応機器が相互接続されたり、クラウド上で大量のデータを自由に出し入れしたり、人間の知能を再現して業務を学習・実行するAI技術が発展したりするなど、超情報化社会が現実のものとなってきている。

<データセンターを担うニアラインHDD>
 そうした超情報化社会を支える柱の1つが、現実世界からセンサーなどで集められた大量のデータを蓄え、クラウドを構成するデータセンターである。このデータセンターの中核を担うのが、最も費用対効果に優れた性能を持つ記憶装置、すなわちニアラインHDDである。データを記憶する役割を果たすストレージは、アクセス頻度が少ないオフライン、アクセス頻度が多いオンライン、それらの中間のニアラインという大きく3つのカテゴリーに分類される。ニアラインストレージは、保管されているデータを高頻度かつ高速に使えるオンラインストレージとは異なり、使用頻度の少ないデータを安価に大量に保管できるのが特長だ。その特長から、クラウドを構成するデータセンターの中核として位置づけられている。

<東芝の第1四半期HDD売上89%増加>
 この程発表された東芝の2021年度第1四半期(4月~6月)決算において、デバイス&ストレージソリューション事業の売上高は前年度同期比60%増の2,009億円と大幅増加した。特にハードディスクドライブ(HDD)類の売上高は前年度同期比89%増の1,226億円と急増、営業損益は47億円の黒字で、前年度同期の18億円の赤字から急改善した。ニアラインHDDについては、過去最多の211万台、25.6エクサバイト(EB)相当を新たに出荷しており、1台当たりの平均容量は現在の業界平均を上回る12.1TBであった。

<主要製造拠点は東芝情報機器フィリピン社>
 東芝のHDD主力製造拠点は、TOSHIBA INFORMATION EQUIPMENT PHILIPPINES(TIP、東芝情報機器フィリピン社)である。ラグナ州ラグナテクノパークなどで約1万2千人の従業員とともに、操業開始の1996年から26年にわたって各種HDD、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)などデータストレージソリューションを世界に提供してきた。昨今のニアラインHDDの需要急増に応えるために複数の自動製造ラインを立ち上げるだけでなく、既存のラインの生産性や効率性も改善することで生産能力を拡大している。2020年は新型コロナウイルス感染拡大やその対策としての地域隔離措置の影響を大きく受けたが、その様な環境下での優先順位を明確に判断、健康・安全確保とHDD製造目標達成を両立させつつある。

<マイクロ波アシスト磁気記録搭載HDD開発>
 2021年2月、東芝初のマイクロ波アシスト磁気記録搭載HDDモデルが開発された。MG09シリーズは、ディスクを9枚搭載し、ヘリウム充填設計の東芝の第3世代機で、革新的な「磁束制御型マイクロ波アシスト磁気記録方式」を採用している。従来型磁気記録の記録密度をディスク1枚当たり2TBに向上させて、装置全体で18TBの大容量を実現している。すでに、TIPのHDDデザインサポートセンターは、MG09シリーズの評価プロセスとデータ分析について、日本の東芝デバイス&ストレージと協力し、量産体制を整えている。「磁束制御型マイクロ波アシスト磁気記録方式」とは、HDDの高記録密度化を可能にする記録方式の一つ。高周波アシスト記録方式を採用し、記録磁極から流れる磁界をより媒体に向かわせ、媒体への記録能力を増強することで、HDDの高記録密度化を可能にする。

<比に高度なHDDノウハウと豊富な人材>
 2021年7月まで約6年間TIP社長を務めた岡村博司氏(現社長は伊藤淳氏)は、「TIPは多様な製品を手掛けており、ノートパソコンやカーナビ、ゲーム機向けのモバイルHDDから、サーバーシステム向けの大容量HDD、そしてデータセンター向けのニアラインHDDまで提供している。デジタルストレージのメーカーとしての幅広い能力を生かしつつ、それを支える優秀な人材を揃えている。これからも、顧客中心のソリューションとイノベーションを、世界中に提供していく」とコメントしている。