サンミゲル、傘下の商業銀行BOCの上場計画

40億ペソ規模のIPOへ、金融事業基盤も更に拡充

2021/12/10

 フィリピン最大級のコングロマリットとなったサンミゲル(証券コード:SMC)は、金融・証券関連分野でも大きな存在感を放っている。

 有力銀行のバンク オブ コマース(BOC)に44%以上出資しているほか、SMCストックトランスファー サービス社を有している。また、フィリピン証券取引所(PSE)の大株主でもある。また、債券や固定利付き商品の上場、売買等を行う電子取引所(PDEx)を運営するフィリピン ディーリング システム ホールディングス社(PDS)の株主となっている。

 このような状況下で、サンミゲルは2022年第1四半期中のBOC新規公募(IPO)、PSEへの新規上場を計画している。BOCは既に、フィリピン証券取引委員会(SEC)にIPO実施、PSEへの上場申請を行ったとのことである。12月10日付けビジネスワールド紙などによると、IPOにおいては、最大約3億2,269万株(増額オプション約4,209万株含む)のBOC株が売却される。1株当たりIPO価格最高で12.50ペソと設定されており、IPO規模は最大で約40億3,367万ペソとなる。

 調達資金は融資原資拡充やATM網の拡充・近代化などに充当される。また、BOCは、商業銀行から拡大商業銀行(ユニバーサルバンク)への昇格を目指しており、そのための資本金基準や上場義務のクリアーという目的も有している。いずれにしても、BOCの上場、拡大商業銀行への昇格が実現すれば、サンミゲルの金融・証券事業基盤は更に拡充される。

 なお、2021年9月末のPSE株主とその保有株数は、PCDノミニー社(多数のフィリピン人投資家の保有株式を管理)5,915万4,838株(保有比率72.23%)となっている。そして、第2位がサンミゲル退職プランの755万5,200株(同9.23%)、第3位がPCDノミニー社(多数の外国人投資家の保有株式を管理)の472万0,943株(同5.76%)、第4位がフリーマン トレーディング社の100万株(同1.22%)などと続く。

 すなわち、個別名義が特定されている単独筆頭株主はサンミゲル退職プランといえる。PCDの個別名称が記されていない分なども含めると、サンミゲル・グループのPSE保有比率は、サンミゲル退職プランが保有と明記されている9.23%よりかなり高いようだ。
 
 フィリピンでは、株式や株式に絡んだ派生商品(ワラントなど)の上場、売買はPSEが管轄している。一方、債券やその他の固定利付き金融商品の上場、売買に関しては、上記のようにPDSグループPDEx債券取引所が担当している。現在のPDSの株主構成は、フィリピン銀行協会(BAP)28.9%、PSE21%、シンガポール証券取引所(SGX)20%、タタ コンサルタンシーサービス(TCS)アジア8.0%、ウィスラー テクノロジーサービス8.0%、サンミゲル4.0%、フィリピン アメリカンライフ&ジェネラルインシュアランス(フィーラムライフ)4%などである。