日本支援の大型インフラ事業「南北鉄道」、建設本格化

進捗率:第1期53.9%、第2期34.5%。第3期28.6%

2022/01/16

   フィリピン運輸省(DOTr)のアーサー・トゥガデ大臣は、1月14日、「クラーク国際空港からラグナ州カランバを結ぶ総延長147キロメートル(37駅)の南北通勤鉄道延伸プロジェクト(NSCR)は、最初の構想が1994年に提案されたが、2017年まで建設未着工という状況が続いた。しかし、ドゥテルテ政権の下で着工、現在建設が本格化しつつある」と表明した。

 NSCRは、PNR(フィリピン国鉄)クラークフェーズ1(第1期、マニラ市ツツバン~ブラカン州マロロス、38km)、PNRクラークフェーズ2(第2期、マロロス~パンパンガ州クラーク、53km)、PNRカランバ(第3期。マニラ~ラグナカランバ、56km)で構成される。2021年12月末の進捗率は第1期が53.85%、第2期が34.46%、第3期が28.62%とのことである。全線が完工すると、クラーク国際空港からラグナ州カランバまでの移動時間は、現在の4時間以上から1時間30分に短縮され、フル稼働後は1日あたり100万人以上の乗客が利用する見込みである。

 第1期事業は ブラカン州の州都マロロス市からマニラ市ツツバンまでの通勤線区間(約38km)を整備するものであり日本の2,419億9,100万円のODAによって支援されており、開通すると、マロロス市とツツバン間の所要時間は現在の約1時間半から35分へと大幅短縮されることになる。建設に関しては、大成建設とフィリピン最大の建設企業であるD.M.コンスンヒ(DMCI)連合がCP1区間(21キロメートル)、三井建設がCP2区間(14キロメートル)の高架橋や駅舎の建設などを受注している。また、住友商事と総合車両製作所(J-TREC)連合が車両104両(8両×13編成)を受注している。2021年11月に8両が納入されている。

 第2期事業は、国際協力機構(JICA)とアジア開発銀行(ADB)との支援事業であり、マロロスとクラークを結ぶ53kmの区間にはカルンピット、アパリット、サンフェルナンド、アンヘレス、クラーク、クラーク空港の6つの駅が設置される。第2期までが完工すると、国内初のエアポートエクスプレスの運行が可能となり、クラーク国際空港⇔マニラ首都圏マカティ市までの所要時間が現在の2~3時間から僅か55分に短縮される。

 第3期事業は、マニラからマニラ南方のラグナ州カランバまでをつなぐもので、ADBが17億5,000万米ドルを融資する方針を表明している。

 更に、フィリピン政府は、2022年第1四半期中に、PNR南部長距離鉄道(別名PNRビコール鉄道)事業の一部区間着工を目指すと表明している。PNRビコール鉄道は、マニラ市からルソン島最南端のソルソゴン州マトノグまでの本線とバタンガス州バタンガス市までの支線合計639キロメートルの鉄道事業。PNRの既存線の改修・近代化と新線建設の組み合わせで実施され、事業費は1,750億ペソと見積もられている。開通するとマニラとビコール地方の所要時間は半分以下へと大幅短縮される。