三菱UFJ銀行、比の船員向け電子通貨事業に参画

日本郵船や丸紅等の合弁企業マルコペイ社に出資

2022/04/01

  日本郵船は、3月30日、「日本郵船、フィリピンのトランスナショナル ダイバーシファイド グループ(TDG)、丸紅が出資、運営するMarCoPay Inc. (マルコペイ社)は、新たに三菱UFJ銀行の出資参画を受け、今後4社にて戦略的パートナーシップにより事業共創を目指していくことに合意した」と発表した。

 マルコペイ社は、船員やその家族、関係者が抱える課題を解決し、彼らの生活を支えて豊かにすることを目指して2019年7月に設立された。現在、外航船員への給与は主に現金で支給されているため、世界を行き交う外航船上には約800億円相当の現金が滞留していると推定されており、それら現金の取り扱いに際しては、船への輸送費や給与を受け取った船員が家族へ海外送金する手数料など、様々な手間と費用が発生している。

 また、船員は一度乗船すると船上といった特殊な職場環境での生活が長期間に及ぶため、健康管理面のサポートや船陸間をつなぐ快適なオンラインサービスへの高い需要がある。さらに、船員の一大供給国であるフィリピンでは、船員が自国の平均水準を大きく上回る給与所得を得ながらも、乗船毎の期間契約となる船員特有の雇用形態から、収入に見合った与信条件での融資枠取得や船員の労働・生活環境に適した保険商品への加入が難しいケースがある。こうした船上における現金取り扱いに伴う費用の削減や、船員の労働・生活環境の改善が課題となっている。

 マルコペイ社は、スマートフォンのアプリで電子通貨による給与受取り、送金、現金化、融資申請、保険や投資商品等を購入できる電子通貨プラットフォーム「MarCoPay」を運営している。このプラットフォームの導入により乗船期間中の給与支給を一部電子通貨で行うことで、現金管理費用を圧縮し、出納業務に要する労力や時間の軽減、現金盗難・紛失のリスクを低減する。また、電子通貨の特性を生かし、船員は乗船期間中も自国への送金が可能である。融資面においては、フィリピン人船員を対象とした融資サービスを開始している。

 このほど、日本を代表するグローバル金融機関であり、フィリピンでの銀行業も展開する三菱UFJ銀行の出資参画により、マルコペイ社は、クレジットスコアリング等のノウハウ活用や、フィリピンでの金融サービスとの連携を戦略的に進め、既存サービスの拡充に加え、貯蓄や投資などの新たなサービスの構築・拡大を目指す。中長期的には、金融プラットフォームのさらなる品質向上や機能拡張により、船員コミュニティの価値を海事産業全体に循環させ、サステイナブルな海上輸送の実現を目指すとともに、フィリピンを含む東南アジアにおける金融サービスへのアクセスなどの社会課題の解決へ向けた協業を進める方針である。