小売業界、第1四半期の回復ピッチに濃淡

最大手SMコロナ前水準に、セブン小幅黒字転換

2022/06/07

 フィリピン証券取引所(PSE)上場の小売企業の2022年第1四半期(1月~3月)事業報告書提出が出揃った。非上場ではあるが最大手の総合小売企業であるSMリテールの業績概要も、親会社のSMインベツトメンツ(SMIC、証券コード:SM)の事業報告書で明らかとなった。

 オミクロン変異株の感染拡大にともなう外出・移動制限再強化で1月は苦戦となったが、2月以降は外出・移動制限緩和で総じて回復基調となった。主要上場企業9社とSMリテールのうち、オールホームとオールデーマーツを除く8社が増収で、増益もしくは黒字転換となった。最大手のSMリテールの収入は6%増の744億ペソでパンデミック前の2019年第1四半期の94%まで戻した。純利益は59%増の29億ペソでコロナ前と並んだ。

 新型コロナ禍で特に苦戦を強いられてきた百貨店や高級品・贅沢品の売上比率の高い企業も小幅ながら黒字転換した。ルスタンで知られるSSIグループ(証券コード:SSI)は6,800万ペソの黒字、メトロリテールストアーズグループ(証券コード:MRSGI)は3,300万ペソの黒字となった。食料品や必需品の比率が高く、パンデミック発生後も営業制限の影響がほとんどなく好調を維持してきたピュアゴールド プライスクラブ(ピュアゴールド、証券コード:PGOLD)は引き続き増収増益であったが、規制緩和で競争が厳しくなったせいか増収率・増益率ともに鈍化した。
 
 コンビニエンスストアは、最厳格な地域隔離措置下でも営業継続を要請される業態ではあったが、これまでは移動の制限で従業員出勤や配送面での困難さという問題で一時休業を余儀なくされる店舗が出たこと、断続的な店内での飲食禁止措置発動などが響き厳しい決算が続いてきた。しかし、今第1四半期は外出・移動制限の緩和で回復に転じた。業界断トツのセブン-イレブンを展開するフィリピン セブン(証券コード:SEVN)は収入が21.3%増の129億ペソ、最終損益は2億ペソの黒字となり、前年同期の3億ペソの赤字から改善した。ただし、利益水準はパンデミック前には遠く及ばない。

 PSE上場の小売企業とSMリテールの2022年1Q業績比較(単位:百万ペソ)

企業名 店舗数 収入 増収率 純利益 増益率 純利益率
ピュアゴールド プライスクラブ 504 39,214 1.8% 2,151 6.5% 5.5%
ロビンソンズ リテール 2,208 39,713 10.9% 1,276 25.1% 3.2%
フィリピン セブン 3,136 12,854 21.3% 199 黒字転換 1.5%
メトロ リテールストアーズ G 61 8,559 23.1% 33 黒字転換 0.4%
ウイルコン デポ 73 7,736 14.9% 851 40.7% 11.0%
オールホーム 57 3,239 -9.8% -28 赤字転落 -0.9%
SSIグループ 521 4,493 27.5% 68 黒字転換 1.5%
オールデーマーツ 34 2,293 6.9% -76 赤字転落 -3.3%
メリーマート コンシューマー N.A. 1,198 30.8% 12 31.2% 1.0%
SMリテール(親会社SMICが上場) 3,215 74,438 6.4% 2,892 58.8% 3.9%
(出所:各社の2022年第1四半期事業報告書などより作成)

 フィリピンのセブン-イレブン店舗数(年末値、22年は3月末)とPSC純利益推移(単位:百万ペソ)
時期 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年  21年  22年3月
店舗数 1,282 1,602 1,995 2,285 2,550 2,864 2,978  3,073  3,136
純利益 873 1,008 1,176 1,318 1,532 1,445 -420  -461 199
(出所:フィリピン・セブン資料などより作成)