東芝、フィリピンで地熱発電設備一式を受注

二国間クレジット(JCM)のスキームを活用

2022/10/05

  東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は、10月4日、「東芝グループの現地法人である東芝フィリピン社と共同で、世界最大の地熱発電設備容量を誇るフィリピンのEnergy Development Corporation (EDC社)の特別目的会社Bac-Man Geothermal Inc. (BGI社)が計画するタナワン地熱発電所向けに、地熱発電設備一式を受注した。2023年6月より現地納入を開始し、2024年11月に運転開始予定である」と発表した。
 
 発表によると、この案件は日本の環境省が実施している二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)資金支援事業のうち設備補助事業(JCM設備補助事業)のスキームを用いており、みずほ東芝リースがJCM設備補助事業の代表事業者となって、EDC社の特別目的会社が排出量モニタリングを行い、これをもとにみずほ東芝リースがGHG排出削減量算定と報告を行う。

 タナワン地熱発電所は、EDC社がルソン島南部のタナワン地区に新規建設する20MWのフラッシュ地熱発電所である。東芝ESSは、この発電所向けに地熱発電設備「Geoportable」などの地熱発電設備一式を納入する。
 
 「Geoportable」は、1~20MW級の小規模な地熱発電向けに東芝ESSが開発した地熱発電設備である。コンパクトなため従来の発電設備では設置が困難であった限られた敷地にも設置することができ、短期間の据付・早期稼働が可能になる。今回、この「Geoportable」の特長や二国間クレジットが適用できる点が評価され契約に至った。

 フィリピンの地熱発電設備容量はアメリカ、インドネシアに次ぐ3位で、1970年代から地熱発電の開発が行われている。再生可能エネルギーによる発電の中で比較的大容量の発電が可能で、気候に左右されない安定電源として地熱発電は最適な発電方法だと考えられている。また、フィリピンの2040年までの電源開発計画では、再生可能エネルギーの比率を20%増やしその発電量を5,283万キロワットとして全発電量の50%以上を再生可能エネルギーとする計画で地熱などの再生可能エネルギーによる発電比率拡大に注力している。

 東芝ESSは、既にフィリピンにおいて、累計13ユニットの地熱発電設備を納入しており、フィリピンの電力の安定供給に貢献している。今後も機器だけでなく、IoTやAI技術を適用した地熱発電所のトラブル予兆診断技術や性能監視に関するサービスなど、顧客ニーズに応じた最適な製品・ソリューションを提供していく方針である。

 みずほ東芝リースは、「脱炭素社会実現への貢献」を事業テーマに、リースの形態にとらわれず、省エネ・再エネ導入拡大の支援サービスに注力している。地熱・小水力・太陽光等の再生可能エネルギーシステムを始め、自立型水素エネルギー供給システム、CO2分離回収装置、メタネーション装置や、各種ユーティリティ機器の導入に関し、国庫補助金の活用サービスなどを通じ、顧客企業の脱炭素化の取り組みをサポートすることで、世界の脱炭素化に貢献し、未来につながる持続可能な社会の実現を目指していく方針である。

<二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業について>
 優れた脱炭素技術等を活用し、途上国等における温室効果ガス排出量を削減する事業を実施し、測定・報告・検証(MRV)を行う事業。途上国等における温室効果ガスの削減とともに、JCMを通じて日本及びパートナー国の温室効果ガスの排出削減目標の達成に資することを目的とする。優れた脱炭素技術等に対する初期投資費用の2分の1を上限として補助を行う。なお、本プロジェクトはフィリピン政府と日本政府の協働の下で実施されている。
 本プロジェクトは、環境省が実施する令和3年度「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」に採択されており、フィリピンのCO2削減および日本のCO2削減目標の達成にも寄与する。今回導入する20MWフラッシュ地熱発電により、年間約3万8,000トンのCO2排出削減に貢献する見込みである。