フィッチ、比格付見通し「ネガティブ」を継続

格付BBB据置、3大格付機関で最も厳しい評価

2022/10/28

 欧州系の国際的格付機関フィッチ レーティングス(フィッチ)は、10月27日、「フィリピン共和国(フィリピン)の外貨建ておよび自国通貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)、外貨建ておよび自国通貨建て無担保優先債券の格付をトリプルB(BBB)に据え置く」と発表した。格付アウトルック(見通し)についても、「ネガティブ(弱含み)」を継続と発表された。
 
 BBBという格付は、投資適格最低基準であるトリプルBマイナス(BBBー)を一段階上回るステータスであり、「金銭債務の履行能力は概ね十分にあると考えられるが、経営又は経済環境の悪化がこの能力を損なう可能性がある」を意味している。フィッチは、2017年12月、フィリピンの格付をそれまでの(BBBー)から(BBB)へと引き上げ、それ以降、BBBを継続している。

 格付アウトルック(見通し)の「ネガティブ」は、今後格付引き下げの方向で見直される可能性高い、すなわち、近い将来格付が引き下げられる可能性があるという意味である。フィッチのフィリピンの先行きに関する見方がやや厳しいといえる。フィッチは、フィリピンの格付アウトルックを2021年7月に、それまでの「ステーブル(安定的)」から、「ネガティブ」へと引き下げており、今回、「ネガティブ」継続が決定された。
 
 なお、世界3大格付機関のなかで、フィッチのフィリピンに対する評価は最も厳しいものとなっている。米国系のスタンダード&プアーズ(S&P)は、フィリピンの格付を「トリプルBプラス(BBB+)」、格付アウトルック(格付見通し)を「ステーブル(安定的)」としている。「トリプルBプラス」は投資適格最低基準の2段階上であり、A格付まであと一歩というステータスである。

 S&Pと同じ米国系のムーディーズ インベスターズ サービス(ムーディーズ)のフィリピン格付は、2014年12月から「Baa2」が継続されている。「Baa2」は他の格付機関の「BBB」と同格である。すなわち、フィッチのフィリピン格付BBBと同様、S&Pの「BBB+」より1ランク低い格付となっている。ただし、ムーディーズのフィリピン格付見通しは「ステーブル(安定的)」となっている。

 すなわち、世界3大格付機関のフィリピン評価は、S&Pが最も強気、ムーディーズが中間、フィッチが最も弱気となっている。なお、日本格付研究所(JCR)のフィリピン格付はAマイナス(A-)、格付け見通しは「安定的」で、有力格付機関の中では最も高い評価となっている。一方、格付投資情報センター(R&I)のフィリピン格付は「BBB+」、格付け見通しは「安定的」である。