2月のインフレ率8.6%(前月8.7%)、6カ月ぶりの減速

輸送費急騰が一服、コアインフレ7.8%に加速(前月7.4%)

2023/03/08

 フィリピン統計庁(PSA)は3月7日、2023年2月の消費者物価(インフレ)統計を発表した。それによると、2月の総合インフレ率(消費者物価指数{2018年=100}の前年同月比)は8.6%となり、14年以上ぶりの高水準であった前月(1月)の8.7%から僅かに減速したものの、4カ月連続の8%台となった。エコノミストグループの直前予想の中間値の8.9%を下回るとともに、フィリピン中央銀行(BSP)の直前推定8.3%~9.5%のほぼ中央値となった。

 13商品グループのうち、交通・輸送が1月の11.1%から2月は9.0%と減速し、2月の総合インフレ率の減速を主導した。一方、食品・非アルコール飲料は上昇率が10.8%と前月の10.7%から僅かに加速、衣料・履物類は4.8%と前月の4.4%から加速した。特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率は7.8%(前月7.4%)であった。

 項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料4.1%(うち食品3.9%)、住宅・水道光熱費1.8%、交通・輸送0.8%、外食・宿泊サービス0.8%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.2%、パーソナルケア類0.2%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、教育0.1%だった。

 総合インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏は8.7%(前月8.6%)、地方は8.5%(前月8.7%)。最もインフレ率が高かった地域は西ビサヤ地域の10.8%、次いでサンボアンガ半島、ダバオ地域の9.9%。一方、最も低かったのは、東ビサヤ地域の6.3%だった。

 <2023年年初2カ月>
 2023年年初2カ月の平均総合インフレ率は8.6%で、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)の上限をかなり超えている。マニラ首都圏は8.7%上昇、地方は8.6%上昇した。平均コアインフレ率は7.6%となった。

 項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料4.0%(うち食品3.9%)、住宅・水道光熱費1.8%、交通・輸送0.9%、外食・宿泊サービス0.8%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.2%、パーソナルケア類0.2%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、教育0.1%だった。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)
項目 2022年2月 2022年1月 2023年2月 2023年1-2月
全国   総合インフレ率 3.0 8.7 8.6 8.6
      コアインフレ率 1.9 7.4 7.8 7.6
首都圏 総合インフレ率 1.9 8.6 8.7 8.7
地方   総合インフレ率 3.4 8.7 8.5 8.6
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2018年基準、前年同月比%)
項目 2022年 2023年
2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月
総合 3.0 4.0 4.9 5.4 6.1 6.4 6.3 6.9 7.7 8.0 8.1 8.7 8.6
食品・非酒類 1.2 2.6 3.8 4.9 6.0 6.9 6.3 7.4 9.4 10.0 10.2 10.7 10.8
酒類・タバコ 4.7 4.8 5.9 6.8 7.8 8.5 9.3 9.8 10.4 10.6 10.7 10.9 11.0
衣料・履物類 1.9 1.9 2.0 2.1 2.2 2.5 2.8 2.9 3.1 3.6 3.9 4.4 4.8
住宅・水道光熱費 4.8 6.2 6.9 6.5 6.6 5.7 6.8 7.3 7.4 6.9 7.0 8.6 8.6
家具・住宅管理 2.3 2.6 2.6 2.5 2.9 3.1 3.4 3.5 3.8 4.5 4.8 5.2 6.2
健康・医療 2.7 2.5 2.4 2.4 2.6 2.4 2.5 2.4 2.6 2.8 3.1 3.3 4.0
交通・輸送 8.8 10.3 13.0 14.6 17.1 18.1 14.6 14.5 12.5 12.3 11.7 11.1 9.0
情報・通信 0.6 0.7 0.7 0.7 0.5 0.5 0.4 0.5 0.5 0.7 0.7 0.7 0.8
娯楽・文化 1.6 1.5 1.6 1.7 1.9 2.2 2.4 2.7 3.0 3.3 3.9 4.2 4.4
教育 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 3.8 3.5 3.4 3.6 3.6 3.6 3.6
外食・宿泊サービス 2.9 3.0 2.8 2.8 2.8 3.4 4.2 4.6 5.7 6.5 7.0 7.6 8.1
金融サービス 43.3 43.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
パーソナルケア類 2.2 2.2 2.3 2.5 2.6 2.8 3.3 3.4 3.7 4.2 4.5 5.0 5.3
首都圏 1.9 3.4 4.4 4.7 5.6 5.1 5.7 6.5 7.7 7.5 7.6 8.6 8.7
地方 3.4 4.1 5.1 5.5 6.3 6.8 6.5 7.0 7.6 8.0 8.2 8.7 8.5
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 フィリピンのインフレ率(2018年基準と2012年基準との比較)とインフレ目標の推移
2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年予 2024年予
2018年基準 N.A. 5.2% 2.4% 2.4% 3.9% 5.8% 6.1% 3.1%
2012年基準 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A. N.A. N.A.
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%
(出所:BSP資料より作成、2022年以降の予想はBSPの2023年2月16日時点の予想)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)
項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
22/2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
4月 4.0 1.6 27.1 -4.6 9.2 4.2 5.0 1.1 11.7 7.3 2.9
5月 5.2 1.5 24.4 -2.4 15.2 5.4 6.2 1.5 13.6 8.7 3.5
6月 6.4 2.0 24.7 1.1 14.4 8.1 6.7 2.7 15.5 10.9 4.3
7月 7.1 2.1 27.6 3.6 5.6 9.9 9.2 4.5 18.4 17.6 5.2
8月 6.5 2.2 26.1 3.9 -2.7 9.6 7.2 6.5 19.6 26.0 5.8
9月 7.7 2.4 26.2 3.8 3.5 9.0 9.1 7.6 20.1 30.2 6.7
10月 9.8 2.5 27.4 4.9 16.0 11.5 9.4 8.7 20.4 34.4 8.1
11月 10.3 3.1 27.0 6.2 25.8 8.6 8.3 9.4 19.8 38.0 8.9
12月 10.6 3.4 26.3 7.6 32.4 7.4 6.3 9.9 19.2 38.8 9.4
23/1月 11.2 2.7 16.0 9.8 37.8 7.0 6.7 11.3 18.5 38.8 9.2
2月 11.1 2.2 12.6 11.5 33.1 6.5 9.9 13.1 17.3 37.0 9.8
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2023年2月の主要品目のインフレ率(2018年=100)と寄与度
項目 物価指数
構成比
2月 1-2月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 8.6 8.6 8.6 8.6
食品・非酒類 37.75 10.8 4.1 10.7 4.0
   うち食品のみ 34.78 11.1 3.9 11.1 3.9
酒類・煙草 2.16 11.0 0.2 11.0 0.2
衣料・履物類 3.14 4.8 0.2 4.6 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 8.6 1.8 8.6 1.8
家具類・住宅管理 3.22 6.2 0.2 5.7 0.2
健康・医療 2.89 4.0 0.1 3.6 0.1
交通・輸送 9.03 9.0 0.8 10.0 0.9
情報・通信 3.41 0.8 0.0 0.7 0.0
娯楽・文化 0.96 4.4 0.0 4.3 0.0
教育 1.96 3.6 0.1 3.6 0.1
外食・宿泊サービス 9.62 8.1 0.8 7.8 0.8
金融サービス 0.03 0.0 0.0 0.0 0.0
パーソナルケア類 4.46 5.3 0.2 5.2 0.2
(出所:BSP資料より作成、インフレ率:%、寄与度:%ポイント)