日本支援のLRT-1号線南方延伸第1期、進捗率88%に

住友商事が運営企業LRMCに出資、三菱商事が車両納入

2023/07/28

 マニラ首都圏軽量鉄道1号線(LRT-1号線)を運営するライトレール マニラ コーポレーション(LRMC社)は、7月26日、「LRT-1号線の南方延伸事業フェーズ1の建設が大きく進展しており、6月末時点の建設進捗率は88%に達している」と発表した。

 LRT-1号線の南方延伸事業は、マニラ首都圏を南北に走るLRT-1号線(全長18km)につき、現在の南端であるバクララン駅からカビテ州バコールまで約11.7km延伸(8駅設置)するものである。この事業における車両調達、車両基地の整備について、日本が円借款「マニラ首都圏大量旅客輸送システム拡張計画」(供与限度額約433億円)の一環として支援している。

 南方延伸事業のフェーズ1は、6.7キロメートル(5駅)をカバー、現在、土木、構造、構造用鋼、建築、機械、電気、配管、防火に関するさまざまな工事が進行中。5つの駅については、既存のバクララン駅の次の駅となるリデンプトリスト駅の進捗率は59.8%、空港の最寄りの駅となるMIA駅の進捗率は66.8%となっている。また、パラニャーケ総合交通ターミナル交換局(PITX)に接続されるアジアワールド駅は54.6%、ニノイ・アキノ駅は59.3%、サントス駅は71.1%となっている。

 これらの急ピッチの進展により、LRMCは、フェーズ1事業は予定通り2023年後半に試運転開始に向けた準備を整え、2024年第2四半期までに完工、2024年第4四半期までに運用開始できると見ている。

 LRT1号線は、東南アジア初の都市鉄道として1984年に開業し、現在もマニラ市内の主要な公共交通機関としての役割を果たしてきている。日本は、開業後に需要増大に対応して行われた2度の機能拡張事業への支援を通じて、その運営に貢献してきた。南方延伸事業が完成すると、首都圏と郊外の間における移動の利便性が向上し、急速な人口増大、経済成長が進展しているマニラ首都圏の持続可能な発展へ寄与することが期待される。全線開通すると、バクラランとバコール間の移動時間は、現在の1時間10分から僅か25分に短縮すると期待されている。また、LRT1号線の1日あたり乗客数は50万人から80万人に増加するともみられている。

 このLRT延伸路線などにも使用される新規車両の納入が、三菱商事によって開始されつつあり、既に最初の1編成が既存路線に投入されている。三菱商事は、フィリピン運輸省より、LRT1号線向け鉄道車両30編成を受注している。契約予定金額は約300億円となり、日本政府とフィリピン政府の間で締結された円借款契約により手当てされている。供給する車両はスペイン最大手の鉄道車両メーカーであるConstrucciones y Auxiliar de Ferrocarriles, S.A.(CAF社)が日本製の機器類を採用してスペインとメキシコで製造。
 
 なお、住友商事は、2020年5月、LRT1号線の運営・保守事業を行うLRMC社の株式約19.2パーセントを間接的に取得し、出資参画した。それまでのLRMC社の株主は、フィリピンを拠点とする大手インフラ投資事業者であるメトロパシフィック インベストメンツ(MPIC)、フィリピン最古かつ最大級のコングロマリット(複合企業)であるアヤラ コーポレーション傘下のAC インフラストラクチャー ホールディングス、グローバルに金融サービスを提供するMacquarieグループの3社であった。ここに、住友商事が加わったのである。