財閥系複合企業12社、9カ月間で8社が増益・黒字転換

収入はサンミゲル1兆ペソ超で断トツ、利益首位はSM、2位アヤラ

2023/11/16

 フィリピン証券取引所(PSE)上場の財閥系複合企業12社の2023年年初9カ月の事業報告書提出が出揃った。2023年10月9日に自主的に上場廃止となったメトロ パシフィック インベストメンツ社(MPIC)の事業報告書が未提出のため下表の集計からは外したが、MPICの9カ月間の帰属純利益は前年同期比22%増の161億ペソであったことが確認されている。なお、個別企業の詳細は別掲もしくは別掲予定である。

 この12社のうち、サンミゲル(証券コード:SMC)、DMCIホールディングス(DMC)、ロペスホールディングスの3社が減収となった。SMCは石油製品価格反落、DMCは石炭価格反落が響いた。サンミゲルは5%減収であったが収入額は1兆0,611億ペソと断トツ、2位のSMインベストメンツ(SM)4,404億ペソの2.4倍に達している。サンミゲルは売上規模の大きい石油販売や電力事業を有している。損益に関しては、SMインベツトメンツが総純利益770億ペソ、帰属純利益559億ペソでともに首位に立っている。名門のアヤラコーポレーション(AC)は、総純利益447億ペソで第2位、帰属純利益も323億ペソで第2位であった。

 帰属純損益ベースでの増益企業は12社中6社、黒字転換2社、減益は3社、赤字転落1社であった。MPICを含めると増益企業は7社となる。総純利益ベースでの増益率トップはJGサミット(JGS)の1,025%、次いでサンミゲルの141%増益であった。帰属ベースの増益率トップは、フィルインベスト デベロップ(FDC)の57%、次いでGTキャピタル(GTCAP)の54%であった。GTCAPは51%を保有するトヨタモーター フィリピンの帰属純利益が2.6倍の109億ペソへと大幅増加したことなどが寄与した。一方、DMCは二桁減益。前年同期が石炭出荷価格の急騰で大幅増益となった反動といえるが、利益額は依然高水準。

 なお、ユーチェンコ財閥のハウス オブ インベストメント(HI)の収益規模が低水準に見えるのは、リサール商業銀行(RCB)など主力の金融事業が含まれていないことなどによる。また、ルシオ・タン氏率いるLTグループ(LTG)にフィリピン航空が含まれていないことも要注意である。

  財閥系複合企業の2023年年初9カ月の決算動向(単位:百万ペソ)
企業名 財閥・総帥名 収入 増減率 純利益 増減率 帰属純利益 増減率
サンミゲル サンミゲル 1,061,088 -5% 31,187 141% 146 黒字転換
SMインベストメンツ SM 440,377 15% 77,033 31% 55,883 30%
JGサミット ゴコンウェイ 251,337 16% 24,949 1,025% 15,375 黒字転換
アボイティス エクイティ アボイティス 232,552 7% 33,573 5% 18,034 -16%
GTキャピタル メトロバンク 223,123 24% 28,950 66% 23,086 54%
アヤラコーポレーション アヤラ 208,202 12% 44,677 26% 32,313 35%
アライアンス グローバル アンドリュー・タン 146,198 18% 20,143 18% 12,934 9%
ロペス ホールディングス ロペス 124,289 -1% 22,209 37% 5,210 27%
DMCIホールディングス コンスンヒ 92,395 -19% 29,801 -31% 20,019 -28%
LTグループ ルシオ・タン 84,332 18% 25,419 -1% 19,247 -6%
フィルインベスト デベロップ ゴティアヌン 58,531 25% 8,224 51% 5,932 57%
ハウス オブ インベストメンツ ユーチェンコ 7,762 18% -11 赤字転落 -41 赤字転落
(出所:各社の四半期報告書などより作成、増減率は前年同期比)