モバイルマネー「Gキャッシュ」急成長、グローブへの利益貢献度12%に

前年同期4%から急上昇、利益貢献額2.3倍の10億ペソ超:24年第1四半期

2024/05/25

 大手通信企業であるグローブテレコム(証券コード:GLO)傘下の有力フィンテック企業であるグローブ フィンテック イノベーションズ(Mynt)が管轄するモバイルマネー『Gキャッシュ』が急成長している。

 『Gキャッシュ』の登録ユーザー数は、新型コロナパンデミックで非接触型支払い志向が高まったこともあって、2020年末に前年末比65%増の3,300万人、2021年末に同82%増の6,000万人と急増を続けた。その後も順調に拡大を続け、2023年末には9,400万人に達した。単純計算では、フィリピン国民の9割がGキャッシュを利用するようになっている。

 Myntは既に黒字化しており、2021年末の評価額は約20億米ドル超に達し、フィリピンで唯一のユニコーン企業となった。Myntの2023年のグローブへの税引き前利益(NIBT)貢献額は前年比193%増の23億7,000万ペソと大幅増加、グローブのNIBTへの貢献度は7.3%に達した。2024年第1四半期のNIBT貢献額は前年同期比130%増の10億2,600万ペソ、貢献度は12%に達し、前年同期の4%から急上昇した。

 Myntには、中国の電子商取引最大手アリババ グループ ホールディング(阿里巴巴)傘下企業でありオンライン決済サービス「Alipay(支付宝)」を展開するアント ファイナンシャル サービス グループ(アント)や、ニューヨークを拠点とするファンド管理企業であるBOW WAVEキャピタル・マネジメント(BOW WAVE)の運営するパートナーシップ・ファンド「ASPフィリピン」なども出資している。現在の出資比率はグローブが約35%、アントが約34%と拮抗するようになっている。

 GLOはこのMyntのIPO(新規公開)・フィリピン証券取引所(PSE)への新規上場を計画している。2023年に上場が期待される時期もあったが、投資環境の悪化もあって、現時点では2025年の上場が有力視されている。しかし、確定したわけではなく、あくまでも投資環境次第とのことである。また、流動性という観点から、PSEの後に米国株式市場への上場、すなわち、フィリピンと米国での重複上場を検討しているとのことでもある。

 一方、「Gキャッシュ」のライバルである「マヤ」もIPO・PSE上場を検討している。マヤは、当地最大の通信企業PLDT(証券コード:TEL)系のフィンテック企業であるボイジャー イノベーションズ(ボイジャー)が運営するモバイルマネーである。ボイジャーの現在の主要株主は、PLDT、中国のテンセント(騰訊)、米国のKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)並びにIFC新興アジア基金である。