世界の中央銀行総裁番付、比レモロナ総裁はA-(上から3番目)

パウエルFRB議長やラガルドECB総裁と同格、日銀植田総裁はB+

2024/10/18

 米国の金融誌「グローバル・ファイナンスマガジン」(1987年創刊)は、10月12日に、1994年から毎年実施されている「中央銀行総裁レポート」の2024年版を発表した。
 
 このレポートは、インフレ抑制、経済成長、通貨安定、金利政策等の観点から、各国・地域の中央銀行総裁の一年間の実績を評価するものである。評価はA(優れた成果)~F(完全な失敗)の6段階で大別され、更に「Aプラス、A、Aマイナス」というように細分化されている。今回は約100カ国・地域の中央銀行が対象となっている。最高ランクはA+、最低はFである。評価期間は2023年7月~2024年6月の1年間で、就任後の期間が短い総裁は「評価するには時期尚早」とされている。また、紛争が深刻な国の中央銀行総裁は、情報が不完全であるため対象外。
 
 2024年レポートで最上位のAプラス(A+)とランクされたのは、インド、デンマーク、スイスという3カ国の中央銀行総裁。第2位のAランクとされたのはブラジル、チリ、モーリシャス、モロッコ、南アフリカ、スリランカ、ベトナムという7カ国の総裁であった。

 3番目となるAマイナス(A-)とランクされたのはフィリピン中央銀行(BSP)のエリ・レモロナ総裁、米連邦準備理事会(FRB)ジェローム・パウエル議長、欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁など15カ国・地域の総裁であった。ASEANではカンボジアとインドネシアの総裁がA-とランクされている。Aプラス、A、A-というA範疇は合計25名であった。

 なお、日本銀行の植田和男総裁はプラス(B+)とランクされている。中国人民銀行の潘功勝総裁もBプラス(B+)であった。アジアの中央銀行総裁の評価は総じて良好であったが、ミャンマーのSwe総裁は最低のFとランクされた。世界で他にFとランクされたのは、ベネズエラのサンチェス総裁のみであった。
 
 A-とランクされたフィリピン中央銀行(BSP)のレモロナ氏は、新中央銀行法制定(1993年)以来7人目のBSP総裁兼金融委員会(MB)委員長として、2023年7月3日から6年間の任期を務めている。「グローバル・ファイナンスマガジン」は、「レモロナ氏は初年度からBSPの総裁としての職務を迅速に進めてきた。BSP総裁就任時は非常に高インフレであったが、2024年上半期の平均総合インフレ率は3.5%で政府のインフレ目標である2%~4%内に収斂、金利引き下げの準備が整った。そして、8月には最新データに基づき、アジアの主要国の中で最初の利下げを実施した。これは、FRBの利下げの動きにも先行したものである」と評価している。

 レモロナ氏は、スタンフォード大学で経済学の博士号を取得。その後、ニューヨーク連邦準備銀行に14年間、国際決済銀行(BIS)に合計33年間在籍、幅広い国際金融業務や公的金融機関業務を経験している。また、マレーシア・クアラルンプールのアジア・スクール・オブ・ビジネスで教授兼理事も務めた。更にウィリアムズ大学、コロンビア大学、ニューヨーク大学、フィリピン大学でも教鞭を執った。そして、アヤラ財閥傘下の有力拡大商業銀行バンク オブ ザ フィリピン アイランズ(証券コード:BPI)の独立系取締役を務めたあと、2022年8月にMB委員に就任した。

 なお、2019年に日本の旭日重光章を授与されたアマンド・テタンコ氏は2005年から2017年まで12年間に渡り、BSPの総裁を務めた。上記の世界の中央銀行総裁番付において、2006年、2007年の2年連続、2011年から6年連続でA範疇にランクされた。すなわち、12年間の任期中、8年もA範疇にランクされた。