世界銀行、比GDP成長率予想を5%台前半へと大幅下方修正

25年5.3%、26年5.4%、27年5.5%と政府目標下限の6%以下に

2025/04/29

 世界銀行は、4月26日に公表した「マクロ貧困見通し(Macro Poverty Outlook)」のレポート内で「米国の貿易政策変更による世界経済の減速を背景に、フィリピンの経済成長率が2027年まで6%を下回る水準で推移する見通し」と発表した。

 2025年のフィリピンの実質国内総生産(GDP)成長率は5.3%、2026年は5.4%、2027年は5.5%と予想。政府が掲げる2025~2028年の6~8%成長目標の下限を大幅に下回る水準が続く見通しで、2024年の実績5.7%も下回る。世界銀行は「今後の成長は、民間の国内需要に支えられる」と指摘。外的リスクが高まる中で成長を維持するには「気候変動への強靭性強化、投資拡大、生産性向上に向けた改革」が必要とした。

 世界銀行はまた、米国のトランプ政権による貿易政策がフィリピンの輸出と製造業に悪影響を与える可能性があるとし、「貿易政策の不透明感が投資や貿易の見通しを抑制しかねない」と分析。米国はフィリピン製品に対して17%の関税を課すと発表したものの、90日間の猶予期間中は一律10%の基本関税が適用されている。

 一方、インフレ率の低下と国内消費の回復が景気下支え要因となる可能性も指摘。1~3月期のインフレ率は平均2.2%で、中央銀行(BSP)の目標レンジ2~4%内に収まっている。2025年の民間消費は5.2%成長、2026年は5.4%、2027年は5.5%と予測。政府消費は2025年8.0%増、2026年7.1%増、2027年6.7%増とした。世界銀行は「中期的な財政目標の達成には、追加的な税制改革と歳出削減への取り組みが必要」と指摘している。

 フィリピンのGDP実質成長率の推移と目標(2018年基準、単位:%)
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25~28目標
伸び率  7.1 6.9 6.3 6.1 -9.5 5.7 7.6 5.5 5.7 6.0~8.0
(出所:DBCC資料より作成、目標は2024年12月7日のDBCC設定数値)