フィリピン統計庁(PSA)が6月5日に発表したデータによると、2025年5月の総合インフレ率(消費者物価指数〔2018年=100〕の前年同月比)が1.3%に低下し、2019年11月の1.2%以来、5年6カ月ぶりの低水準となった。民間エコノミストの事前予想コンセンサス(1.3%)と一致。また、中央銀行(BSP)の直前予想レンジ(0.9%～1.7%)の中間値とも一致した。

　消費者物価指数上昇率(インフレ率：2018年基準、前年同月比%)

項目	24年5月	25年4月	25年5月	25年1－5月
全国　　 総合インフレ率	3.9	1.4	1.3	1.9
コアインフレ率	3.1	2.2	2.2	2.3
首都圏　総合インフレ率	3.1	2.4	1.7	2.3
地方　　 総合インフレ率	4.1	1.2	1.2	1.8

(出所：PSA資料より作成)

　総合インフレ率とコアインフレ率の推移(2018年基準、前年同月比%)



　2025年5月の総合インフレ率は、非食料品価格の上昇鈍化により一段と減速した。電気料金および国内石油製品価格の低下が、非食料品のインフレ率を押し下げた。住宅・水道・電気・ガス・その他燃料費(住宅・水道光熱費)は食料品・非酒類に次いで構成比の大きい品目である。コメ価格は、国際市況の低下、収穫期に伴う供給増加、価格安定に向けた政策などにより下落率が12.8％と更に拡大(前月10.9%下落)したが、魚介類、果物・ナッツ類、野菜、肉類の価格上昇によって相殺された。

　変動の激しい食品・エネルギー関連品目を除いたコアインフレ率は2.2%となり、前月と同水準であったが、前年同月(3.1%)からは減速した。
　
　地域別では、マニラ首都圏の総合インフレ率は1.7%で前月の2.4%から減速したが、地方は1.2%で前月と同水準。インフレ率が最も高かった地域は、コルディリェラ行政地区(CAR)の2.5%、次いでイロコス地域の2.3%。最も低かった地域は、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治区(BARMM)の-1.6%、次いでソックサルジェン地域の-1.1%だった。

　5月の総合インフレ率1.3%への寄与度は、食品・非アルコール飲料0.3%(うち食品0.2%)、住宅・水道・光熱費0.5%、外食・宿泊サービス他0.2%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、教育サービス0.1%、パーソナルケア0.1%、情報・通信0.0%、娯楽・文化0.0%、交通・輸送費-0.2%だった。

　【2025年年初5カ月間】
　1月から5月の5カ月間の平均総合インフレ率は1.9%で前年同期の3.5%から大幅に減速し、政府の年間インフレ目標(2.0%～4.0%)の下限値以下となった。地域別では、マニラ首都圏が2.3%、地方が1.8%で、それぞれ前年同期の3.0%、3.6%から減速した。平均コアインフレ率は2.3%で、同様に、前年同期の3.4%から減速した。

　平均総合インフレ率1.9%への寄与度は、食品・非アルコール飲料0.8%(うち食品0.7%)、住宅・水道・光熱費0.5%、外食・サービス他0.2%、パーソナルケア0.1%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、教育0.1%、通信0.0%、娯楽・文化0.0%、交通・輸送費-0.1%だった。

　総合インフレ率月別推移(2018年基準、前年同月比%)

項目	2024年								2025年
月	5月	6月	7月	8月	9月	10月	11月	12月	1月	2月	3月	4月	5月
総合	3.9	3.7	4.4	3.3	1.9	2.3	2.5	2.9	2.9	2.1	1.8	1.4	1.3
食料品・非酒類	5.8	6.1	6.4	3.9	1.4	2.9	3.4	3.4	3.8	2.6	2.2	0.9	0.9
酒類・タバコ	4.2	3.8	3.4	3.3	3.1	3.0	3.1	3.1	3.5	3.4	3.6	3.7	3.8
衣料・履物類	3.4	3.2	3.1	3.0	2.9	2.7	2.6	2.4	2.3	2.1	1.8	1.6	1.6
住宅・水道光熱費	0.9	0.1	2.3	3.8	3.3	2.4	1.9	2.9	2.2	1.6	1.7	2.9	2.3
家具・住宅管理	3.1	2.8	2.8	2.7	2.6	2.4	2.7	2.7	2.6	2.3	2.1	2.1	2.0
健康・医療	2.9	2.9	2.8	2.6	2.6	2.6	2.6	2.5	2.5	2.3	2.2	2.4	2.4
交通・輸送	3.5	3.1	3.6	-0.2	-2.4	-2.1	-1.2	0.9	1.1	-0.2	-1.1	-2.1	-2.4
情報・通信	0.5	0.5	0.5	0.5	0.4	0.2	0.2	0.2	0.2	0.3	0.4	0.3	0.4
娯楽・文化	3.5	3.5	3.4	3.3	2.8	2.6	2.4	2.5	2.4	2.4	2.2	2.1	2.2
教育サービス	3.8	3.8	6.1	5.5	4.3	4.3	4.3	4.3	4.2	4.2	4.2	4.2	4.3
外食・宿泊サービス	5.3	5.1	4.9	4.6	4.1	3.9	3.9	3.8	3.2	2.8	2.3	2.3	2.0
金融サービス	-0.6	-0.6	-0.6	-0.6	-0.6	-0.6	-0.6	-0.6	0.0	0.0	0.0	0.0	0.0
パーソナルケア類	3.4	3.2	3.2	3.0	2.9	2.8	2.9	2.9	2.8	2.6	2.6	2.5	2.5
首都圏	3.1	2.3	3.7	2.3	1.7	1.4	2.2	3.1	2.8	2.3	2.1	2.4	1.7
地方	4.1	4.1	4.6	3.6	2.0	2.6	2.6	2.9	2.9	2.0	1.8	1.2	1.2

　(出所：PSA資料より作成）

　食料品物価上昇率(2018年基準、前年同月比%)

項目	食品	米	コーン	果実	野菜	肉類	魚類	乳製品・卵	油・油脂	砂糖・菓子類	その他食品
24/ 5月	6.1	23.0	6.5	5.5	2.7	1.6	0.0	1.4	-3.6	-2.8	5.3
6月	6.5	22.5	13.1	5.6	7.2	3.1	-1.4	1.3	-3.0	-3.0	5.9
7月	6.7	20.9	17.5	8.4	6.1	4.8	-0.8	1.8	-2.6	-3.4	6.0
8月	4.2	14.7	18.4	9.4	-4.3	4.0	-3.1	3.2	-2.0	-3.8	5.5
9月	1.4	5.7	6.9	11.9	-15.8	3.6	-1.2	4.0	-1.4	-3.8	5.1
10月	3.0	9.6	9.7	11.2	-9.2	3.6	-0.4	3.6	-0.4	-3.3	4.6
11月	3.5	5.1	8.2	7.3	5.9	3.9	0.4	2.9	0.2	-3.0	4.2
12月	3.5	0.8	5.0	7.6	14.2	4.9	1.0	2.4	0.9	-2.7	4.0
25/ 1月	4.0	-2.3	3.6	6.5	21.1	6.4	3.3	2.4	2.2	-2.3	4.0
2月	2.6	-4.9	0.7	6.9	7.1	8.8	2.9	2.7	3.5	-1.2	3.7
3月	2.3	-7.7	-1.6	6.7	6.9	8.2	5.5	3.4	4.0	-0.6	3.8
4月	0.7	-10.9	-4.9	6.2	2.3	7.7	4.3	4.0	4.7	-0.7	3.4
5月	0.7	-12.8	-10.6	8.3	3.4	7.9	5.7	4.9	5.8	-0.6	3.0

(出所：PSA資料より作成)

　2025年5月の主要品目のインフレ率(2018年=100)と寄与度

項目	物価指数	5月		1－5月
	構成比	インフレ率	寄与度	インフレ率	寄与度
総合	100.00	1.3	1.3	1.9	1.9
食料品・非酒類	37.75	0.9	0.3	2.1	0.8
うち食料品のみ	34.78	0.7	0.2	2.1	0.7
酒類・煙草	2.16	3.8	0.1	3.6	0.1
衣料・履物類	3.14	1.6	0.1	1.9	0.1
住宅・水道光熱費	21.38	2.3	0.5	2.1	0.5
家具類・住宅管理	3.22	2.0	0.1	2.2	0.1
健康・医療	2.89	2.4	0.1	2.4	0.1
交通・輸送	9.03	-2.4	-0.2	-0.9	-0.1
情報・通信	3.41	0.4	0.0	0.3	0.0
娯楽・文化	0.96	2.2	0.0	2.3	0.0
教育	1.96	4.3	0.1	4.3	0.1
外食・宿泊サービス	9.62	2.0	0.2	2.5	0.2
金融サービス	0.03	0.0	0.0	0.0	0.0
パーソナルケア類	4.46	2.5	0.1	2.6	0.1

(出所：BSP資料より作成、インフレ率：%、寄与度：%ポイント)

　フィリピンの総合インフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)

年	18年	19年	20年	21年	22年	23年	24年	25年予	26年予	27年予
18年基準	5.2%	2.4%	2.4%	3.9%	5.8%	6.0%	3.2%	2.3%	3.3%	3.2%
12年基準	5.2%	2.5%	2.6%	4.5%	N.A.	N.A.	N.A.	N.A.	N.A.	N.A.
目標	2～4%	2～4%	2～4%	2～4%	2～4%	2～4%	2～4%	2～4%	2～4%	2～4%

(出所：PSA資料などより作成、2025年以降の予想はBSPの2025年4月10日時点のリスク調整ベース予想値)