PSE上場の日系子会社、2024年度の決算出揃う

パナソニック系PMPC91%増益、東ソー系MVC17%減益

2025/07/14

 フィリピン証券取引所(PSE)上場企業の2024年度の決算発表が出揃った。

 PSE上場の日系企業(マジョリティ有する企業)は、東ソー子会社のマブハイビニール(証券コード:MVC、会計期末:12)と、パナソニック子会社のパナソニック マニュファクチャリング(証券コード:PMPC、会計期末:3月末)2社である。2社の業績動向は以下の通り。

 1.マブハイビニール(MVC、東ソー子会社)
 MVC2024年の売上高は、苛性ソーダおよび次亜塩素酸ナトリウムの販売量増加により前年比(以下同様)0.01%増の307,407万ペソと微かながら増収となった。しかし、生産量の減少や原材料費の上昇、減価償却費の増加などにより売上原価も増加、粗利益は11.3%減の107,162万ペソにとどまった。物流コスト、営業経費、修繕費の増加もあって、営業利益も29.3%減の34,228万ペソ、帰属純利益も17.2%減の33,063万ペソと二桁減少した。
 
 ちなみに、MVC2025年第1四半期の売上高は前年同期比(以下同様)19.6%増の85,895万ペソ、粗利益は2.5%減の27,125万ペソ、総費用は27.3%増の77,549万ペソだった。これらの結果、帰属純利益は24.4%減の7,139万ペソとなった。なお、年間ベースでは下表のとおり堅調な業績推移が続いている。

 MVC1934年にマブハイラバー社として設立され、1960年に化学品、PVC製品事業を開始した。1965年から苛性ソーダ年産4千トンの生産能力で生産・販売を開始し、1966年に現在の社名に変更した。その後、フィリピンにおける苛性ソーダの需要拡大に伴い生産増強を行っており、フィリピン唯一の電解メーカーとして、その地位をより確固たるものとしてきている。国内で唯一の液体苛性ソーダおよび液体塩素を製造する企業であり、塩酸および次亜塩素酸ナトリウムにおいても国内最大の供給企業である。現在の売上高の99%は苛性ソーダと塩素化合物で占められている。

 なおMVCは、イリガン工場(所在地:ミンダナオ島北ラナオ州イリガン市)の電解設備の生産能力を68%増強した。投資額は約63,000万ペソ(16億円)であった。24年秋にこの増強工事が完工した。それまでの電解設備生産能力は、苛性ソーダ換算で年産19,000トンであるが、同13,000トン(68%)増強し、同32千トンとした。また、この電解設備増強プロジェクトでは、電力および蒸気の消費量削減や、更なるエネルギー有効活用を併せて実施することで二酸化炭素の排出量を増強前よりも削減する。

 フィリピンの苛性ソーダ需要は、食品工業洗浄用途を中心に幅広い産業で需要が拡大しており、今後も堅調な成長が見込まれる。一方、塩素需要も、インフラ整備が進む上下水道の殺菌用途や、漂白剤用途等で需要が伸長している。このような環境下、MVCは、電解設備の生産能力を大幅増強することで、フィリピンにおける苛性ソーダおよび塩素誘導品の需要の拡大に対応し、安定供給体制の確立を図った。
 
 東ソーは2015年にMVCを子会社化、20253月末の保有比率は87.975%となっている。三菱商事もMVCへの出資を継続(20253月末で6%を保有)している。東ソーは、フィリピンでMVCのほか、塩化ビニール製造のフィリピン レジンズ インダストリーズ(出資比率80%)、塩化ビニールコンパウンド製造のトーソーポリビン(82.25%)という子会社などを有している。

 表1.マブハイビニールの業績推移(単位:万ペソ)
 2019年 2020年  2021年 2022年  2023年    2024年  伸び率
売上高 232,300 207,011 218,742 320,105 307,377  307,407  0.01%
粗利益 95,232 94,813 88,532 118,792 120,776   107,162 -11.3%
営業利益  47,592 45,704 36,123 52,501 48,418   34,228  -29.3%
帰属純利益   36,343 33,304  27,587  39,907 40,844   33,063  -17.2%
(出所:マブハイビニール年次報告書などより作成)

 2.パナソニック マニュファクチャリング(PMPC)
 PMPC20253月期(20244月~20253)の売上高は前期比(以下同様)18.6%増の169205万ペソに達した。冷蔵庫、エアコンが国内販売、輸出ともに好調だったこと、販促硬貨、販売店が在庫積み増しを積極化させたことなどで二桁増収となった。国内売上高比率が79.1%、輸出比率が20.9%。製品別売上高構成比率は冷蔵庫41.3%、エアコン27.8%、洗濯機17.3%、その他13.6%であった。
 
 製造原価も18.8%増加したが、二桁増収効果などにより粗利益は17.7%増の317,305万ペソとなった。販売費が16.9%増加、一般管理費も12%増加したが、金利収入や火災事故に関する保険金の受領等その他収入が3.4倍の39,511万ペソへと急増したこともあって、純利益は91.4%増の52,155万ペソに達した。
 
 PMPCの起源は、19635月に設立されたフェスティバル・マニュファクチャリング(FMC)であり、このほど創業62周年を迎えた。FMCは、1965年、プレシジョン・エレクトロニクス(PEC)と社名変更した。このPECと松下電器産業(MEI、社名は当時)1967年にフィリピンで合弁家電企業を設立した。当初の合弁企業名はPECだったが、25年後の1992年にマツシタ・エレクトリック・フィリピン(MEPCO)と変更された。さらに、2005年に現社名PMPCへと再変更された。

 19831月には、フィリピン証券取引所(PSE)に上場された。すなわち、一昨年1月に上場40周年を迎えた。現在、PMPCは額面1ペソの普通株式を約42,272万株発行している。そのうち、フィリピン人のみが投資可能なA株約8,472万株が上場されている。浮動株比率は14.93%、日本のパソニック本社のPMPC保有比率は20253月末時点で79.96%である。パナソニック本社の保有するのはPMPCB株である。

 表2.パナソニック・マニュファクチャリング・フィリピン(PMPC)業績推移(単位:万ペソ)
項目 21年3月期 22年3月期 23年3月期 24年3月期 25年3月期 伸率
売上高 1,088,310 1,259,053 1,517,832 1,425,125 1,690,205 18.6%
粗利益 256,628 250,411 253,339 269,559 317,305 17.7%
税引前利益 47,865 20,184 25,589 33,642 73,295 117.9%
所得税費用 12,063 7,793 5,876 6,392 21,140 230.7%
純利益 35,802 12,392 19,713 27,250 52,155 91.4%
(出所:PMPCの年次報告書などより作成)