三菱商事のGキャッシュへの184億ペソ間接出資承認

比競争委員会、『実質的な競争制限』にあらずと判断

2025/08/01

 フィリピン競争委員会(PCC)7月末に、三菱商事によるモバイルマネー(GCash)運営企業Mynt社への間接出資案件に関して、「この出資案件は、QRコードを利用した対面型のデジタル決済市場において『実質的な競争制限』にはつながらないと判断した」と発表した。

 三菱商事は202410月に、アヤラ財閥の旗艦企業アヤラコーポレーション(アヤラコープ、証券コード:AC)と基本合意書を締結し、フィリピン最大の金融アプリでありデジタルキャッシュレスエコシステムであるグローブ フィンテック イノベーションズ(Mynt社、本社:マニラ首都タギグ市)に三菱商事が出資参画することについて合意した。

 三菱商事は、AC子会社でMynt社の株式を約13%保有するACベンチャーズ ホールディングス(ACV)50%出資(出資額184億ペソ、約480億円)することで、Mynt社事業及び今後の事業機会に対し、ACと共同で参画していく。2025331日、ACACV、および三菱商事の3社は、ACVに対する三菱商事の出資に関する正式な投資契約を締結した。すなわち、三菱商事によるMynt社への間接出資が正式契約されたことになる。

 PCCによると、三菱商事はフィリピン国内でコンビニエンスストア「ローソンフィリピン」を間接的に保有しているものの、QRコード決済市場での影響力は限定的であり、競争への重大な影響はないと判断された。また、PCCGCashによるQRコード決済市場でのシェアが小さいことや、政府が推進する決済の相互運用性強化の取り組みも、競争への悪影響を抑制する要因になるとした。

 フィリピンはASEAN諸国の中でも人口、GDPともに最も高い伸びが期待される国であり、銀行口座保有率が低い一方で、携帯電話やインターネットの普及率が高く、デジタル金融サービスの拡大余地が大きい市場である。Mynt社は、フィリピンの金融包摂を加速させることをビジョンとして掲げ、フィリピン国民の8割以上が利用したことがあるEウォレット(モバイルマネー)Gキャッシュ」を主要事業として展開している。

 三菱商事は、AC1974年より提携を開始し、フィリピンにおいて様々な産業分野での協業を重ねてきた。提携50周年を迎えて両社の関係を更に進展させるべく、包括的協業に関する覚書を締結。三菱商事とACは、Mynt社の企業価値向上に取り組むと共に、C2B事業領域(リテイル、ヘルスケア等)での事業開発・クロスセルを実現し、またモビリティ、再生可能エネルギー、カーボンマネジメント等の領域においても多面的に協業を推進することで、フィリピンの経済発展に貢献して行く方針である。

 またMynt社には、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)20248月に39,300万米ドル(633億円)の出資(8%相当)を決定しており、ACMUFG、三菱商事の3社はMynt社の株主として連携し、Mynt社の成長を支援していく。