フィリピン、今年も人身売買監視国指定を回避
2014/06/22
タイ、マレーシアは制裁対象となりうる優先監視国
米国務省が2014年人身売買報告書発表
米国国務省は6月20日、「2014年人身売買報告書」を発表した。
この「人身売買報告書」は人身売買防止に関する各国政府の取り組みに関する最も包括的な世界的規模の報告書であり、人身売買に対する国際的な認識を高め、効果的な対策へと各国を後押しするものである。また、深刻な事例の被害者が多いとされる国に関する報告も含まれている。
この報告書は、世界各国の人身売買の状況や対策などに関して、「第1階層」(人身売買防止の国際最低基準を満たしている)、「第2階層」(国際基準達成に向けて努力中)、「第2階層・監視リスト」(努力中だが成果見られず)、「第3階層」(改善努力や成果見えず)の4段階に分類しており、制裁対象となりうる第3階層が最低ランクとなっている。2013年版は14回目の発表であり、188カ国・地域を対象としている。
今回、最低ランクの「第3階層」に指定されたのは、アルジェリア、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、キューバ、赤道ギニア、エリトリア、イラン、北朝鮮、クウェート、リビア、マレーシア、モーリタニア、パプア・ニューギニア、ロシア、サウジアラビア、シリア、タイ、ウズベキスタン、ベネズエラ、イエメン、ジンバブエという23カ国。
下から2番目のランクである「第2階層・監視リスト」に分類されたのは44カ国。東南アジアからカンボジア、ミャンマー、ラオス、東ティモールが指定されている。昨年「第3階層」に転落した中国が2年ぶりに「第2階層・監視リスト」に戻った。
一方、最も良好な「第1階層」には、欧州主要国、豪州、ニュージーランド、米国など31ヵ国が指定されている。アジアでは台湾と韓国がにリストアップされている。韓国が連続して「第1階層」とされていることにはかなりの違和感がある。
日本は引き続き、上から2番目の「第2階層」とランクされた。日本は、これまでとと同様、外国人研修・技能実習制度について「賃金不払い、保証金などによる身柄拘束や行動制限など人身売買の要素があると指摘されている。また、暴力団組織が性風俗産業で外国人女性を働かせる、あるいは偽装結婚例が見られるなどど、日本政府による取り組みが依然不足していると指摘されている。また、初めて、「JK(女子高生)お散歩」(客が金銭を支払って未成年女子とデート)も問題があると指摘された。
フィリピンは、日本、ブルネイ、インド、インドネシア、ベトナムなどと同ランクの「第2階層」に4年連続で指定された。米国国務省は、フィリピンに関して、依然、売春、労働搾取などの目的の人身売買の提供地、経由地、目的地となっているなどと指摘、人身売買防止に必要な最低基準を満たしていないと判断している。特に、児童買収ツアーの目的地になっていることが問題視されている。フィリピン女性が、日本、韓国、中国、東南アジア、中東などで売春に従事させられているとも指摘している。
大型台風など災害による貧困が人身売買を誘発したり、紛争地域での児童兵士募集などの問題もあると指摘されている。しかし、フィリピン政府が人身売買防止委員会(IACAT)の予算を引き上げ、2013年には240万ドル相当を充当するなど防止努力を強化していることを評価、引き続き上から2番目のランクである「第2階層」とした。
なお、フィリピンは、2005年まで「第2階層・監視リスト」に指定されていた。その後2006年~2008年までは「第2階層」に格上げされたが、2009年、2010年と「第2階層・監視リスト」に逆戻りしたという経緯がある。2011年、2012年、2013年、2014年は、「第2階層」とされ、一応、4年連続で要監視国リストからは除外されている(14年6月20日の米国国務省人身売買監視対策室発表などより)。